古村:はい。ちょっと違う角度から自分の治療や病状を見たかったんです。相談した先生に「100人に1人ぐらいの珍しい症状です。私があなたの主治医でも、同じ治療を選択します」と穏やかにおっしゃっていただき、ホッとしました。

垣添:人生は「禍福はあざなえる縄のごとし」ですから、今度は100人に1人の幸運に当たる可能性もありますよ。ご家族の支えも大きいのではないですか?

古村:私はシングルマザーで、20歳を超えた息子が3人います。弱音を吐くと、「大丈夫だよ」「そんな日もあるよ」と励ましてくれたりもしますが、「しんどいよ」と言うと、「あ、そう」みたいに重く受け止めないこともあります。

垣添:男の子だから、軽く突っぱねるふりをするのでしょう。

古村:でも、それでリラックスできるんですよね。

垣添:やはりご家族がいないと、厳しい体験を乗り越えるのは難しい?

古村:私の場合は、そうですね。いろいろとこぼしています。

垣添:生活ではどんな工夫を?

古村:食事は野菜中心にして、できるだけ家で食べています。あと、疲れを残さないように、睡眠時間を確保しています。

垣添:がんとの向き合い方は変わってきましたか?

古村:以前は「がん細胞と闘うぞ」という意識が強かったのですが、3回目になると、闘う気力がなくなりました。ある日、「がん細胞さん、もう闘うのはやめて、お互いに本来の姿に戻りましょうね。ともに歩んでいきましょう」と語ったんです。すると肩の力が抜けて、リラックスできました。しんどいときには「がん細胞からのメッセージかな」と思って無理をしないようになりました。

垣添:がんと向き合っている方にとって、非常に重要なメッセージですね。

古村:はい。長期戦で、今日はよくても明日はわからない。日によって調子が違うので、がんばりすぎるのはちょっとつらいかなあ、と思います。サバイバーの方には、「自分の体と対話して、力を抜けるところを見つけて、今を大切に生きましょう」と語りかけたいですね。

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