今の時代、人生は長い。夫婦岩のように寄り添う生活が理想だが、パートナー関係を解消したいと離婚に踏み切る男性が増えているとか(写真はイメージ)
今の時代、人生は長い。夫婦岩のように寄り添う生活が理想だが、パートナー関係を解消したいと離婚に踏み切る男性が増えているとか(写真はイメージ)

「妻がいない老後」を考えたことはあるだろうか。熟年離婚といえば、これまで妻から離婚を切り出す例が多かったが、ここ最近、妻が“不用品”になる夫が増えているという。何が夫をそうさせるのか。決意したら、どんな手順が必要なのか。長生き時代の悩める夫に、賢い離婚術を伝授する。

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「妻と別れて、本当の自分を取り戻せました」

 横浜市在住の会社員、加藤武司さん(仮名・59歳)。30年以上連れ添ってきた3歳年下の専業主婦の妻と昨年、離婚した。離婚を切り出したのは、夫である武司さんのほうからだ。

「これから先、30年は生きる。人生まだまだこれからと考えると、妻と一緒じゃないほうが幸せだと思ったんです」

 結婚は26歳のとき。当初は仲の良い夫婦で、2人の子どもにも恵まれた。だが、下の子の小学校入学を機に、妻が「教育費の足しに」とパートに出始めてから、夫婦関係が変わってきた。

 家にいるときの妻は、「パートで疲れてる」と言ってイライラ。ちょっとしたことで、加藤さんに対して怒鳴り散らすようになり、子どもにもきつく当たるようになった。子どもが高校を卒業すると妻はパートを辞めたが、すでに夫婦関係は冷え切っていて、同じ部屋にいてもろくに会話もしないのが当たり前になっていた。

「妻は僕に無関心で、食事も別々。家にいても安らげず、居場所がない日々でした」

 離婚の決め手になったのは、2年前、加藤さんが病気を患ったときのことだ。1カ月ほどの入院で、妻が見舞いに来たのは一度だけ。病室に顔を見せたほんの5分ほどの間に妻の口から出たのは「入院費用がかさむ」「早く良くなってくれないと、お金が心配」というそっけない言葉だけ。老後を目前に控えた病身にはこたえた。

「妻にとって僕は、もはや人生のパートナーではなく、ただの“金づる”でしかないのだと実感しました」

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松岡かすみ

松岡かすみ

松岡かすみ(まつおか・かすみ) 1986年、高知県生まれ。同志社大学文学部卒業。PR会社、宣伝会議を経て、2015年より「週刊朝日」編集部記者。2021年からフリーランス記者として、雑誌や書籍、ウェブメディアなどの分野で活動。

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