「右足に感謝しかない」。記者会見でユヅはそう語りました。奇遇。ちょうど私も帰りの京急電車のなかで「チクショウ! 痛くてしょうがねーよっ! なんとか落語できたけど! あー腹立つ! この左足のバカッ!」と弟子にぶちまけてたのです。意味はほぼほぼ一緒と思って頂いてよいでしょう。

 その翌日、病院に行くと、私の左足痛の原因は痛風の発作でした。

 医師から「ホント反省しないね~」の言葉に「へへ、すいません~、気をつけます~」と返す私。ちょうどユヅも「怪我を完治させて、まだ滑っていくと思う」と語っていました。これもほぼほぼ同じ意味なので驚いたな。

「『滑ったら滑りっぱなし』なのは、落語もスケートも一緒だね」と言ったお客がいましたが、ひっぱたくぞ、おい。

 4年後の北京五輪の年には私もユヅもどうなっているのでしょう。遠くはない未来を夢想しながら、魚卵も干物も控えてプリン体カットの日々です。今日もノンアルで我慢だな。アスリートはマジつらいなー。

週刊朝日  2018年3月16日号

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春風亭一之輔

春風亭一之輔

春風亭一之輔(しゅんぷうてい・いちのすけ)/落語家。1978年、千葉県生まれ。得意ネタは初天神、粗忽の釘、笠碁、欠伸指南など。趣味は程をわきまえた飲酒、映画・芝居鑑賞、徒歩による散策、喫茶店めぐり、洗濯。この連載をまとめたエッセー集『いちのすけのまくら』『まくらが来りて笛を吹く』『まくらの森の満開の下』(朝日新聞出版)が絶賛発売中。ぜひ!

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