ブロックで囲まれたスペースにすし詰め状態で入れられている繁殖用の犬たち。足元は金網になっていて、その下には糞尿がたまっているという(日本動物福祉協会提供)
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 約400匹の犬を過密な状態で飼育し、繁殖に使っていたとして、福井県坂井市の繁殖業者が1日、公益社団法人「日本動物福祉協会」から動物愛護法違反(愛護動物に対する虐待)などの疑いで県警に刑事告発された。この繁殖業者は、生まれた子犬や子猫を県内のペットショップなどに販売していたとみられる。

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 繁殖業者の施設に県職員とともに立ち入った地元ボランティアらによると、飼育されていたのはチワワやフレンチブルドッグ、ミニチュアピンシャー、柴犬など小型犬が中心。これら繁殖用の犬猫たちは狭いスペースに、すし詰め状態で入れられていたという。

 2017年12月時点では、約400匹の犬猫を管理するのに従業員は2人しかおらず、餌は1日1回しか与えられていなかった模様。病気やケガをしている犬に対して適切な処置が行われていた様子もなく、施設内は「強烈なアンモニア臭で、マスクをしていても鼻をつく状態だった」(地元ボランティア)。狂犬病の予防注射も受けさせていなかったという。日本動物福祉協会ではこれらの事実が、動物愛護法違反(愛護動物に対する虐待)と狂犬病予防法違反にあたるとして県警に刑事告発した。協会は福井県に対しても、この業者について適切な改善指導などをするよう、申し入れている。

 犬猫の繁殖業者を巡っては現在、環境省が、飼育管理に関する数値基準の導入に向けて検討を進めている。5日には専門家らによる1回目の「動物の適正な飼養管理方法等に関する検討会」が開かれる予定で、今回の刑事告発は今後、繁殖業者に対する規制強化を求める動きにも影響を与えそうだ。

 日本動物福祉協会調査員の町屋奈獣医師は「劣悪な業者をきちんと指導できていない行政の責任は重い。一方でこうした業者を効果的に指導、改善させていくためには、ケージの大きさや生涯繁殖回数、従業員1人あたりの最大飼育頭数などについての具体的な数値による規制や、動物の状態を考慮した快適な飼育条件を明確化することなどが必要です」と話している。(朝日新聞文化くらし報道部記者・太田匡彦)

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