隠れ疲労は、「気持ちいい」「もっと頑張れる」といった快感や意欲による興奮が脳にもたらされているときに起こりやすい。冒頭の男性のように責任感が強くて意欲的な人ほど隠れ疲労をためやすいのだ。だが、「やる気」や「充実感」に疲労感が紛らわされているだけで、心身は確実に疲れている。隠れ疲労は放置すれば、過労死に至ってしまうリスクが高いという。自覚がないまま疲労を蓄積し続けてしまうからだ。

「司令塔である自律神経が疲労によってその機能を失えば、心臓が暴走して心筋梗塞を起こしたり、血圧が異常に高くなって脳卒中を起こしたりするリスクを飛躍的に高めてしまう。中高年の自律神経機能は20代の半分以下に落ちるため、何事にも精力的に楽しんで取り組む人こそ注意してほしい」(同)

 隠れ疲労に気づくには、「無意識のうちに出てくる兆候を見逃さないで」と梶本さんは話す。例えば、寝落ち。

「電車の中で、隣の駅に着くまでに眠ってしまうとか、ベッドに入って1、2分とたたないうちに眠ってしまうことがよくある場合は要注意です。寝つきがいいと思われている方の中にこそ、実は隠れ疲労を抱えた人が多いですね」(同)

 そして、毎日の習慣が面倒に感じるようなときも隠れ疲労を疑ったほうがいい。

「自宅から駅までなど、普段歩いている1、2キロの距離を、『なんか今日は歩くのがだるいな』と感じて、タクシーやバスに乗ることを考えてしまう。そういった衝動は隠れ疲労が氷山の一角として表面化した可能性が高いでしょう」(同)

 普段は楽しいデートが「今日は気乗りしないな」というような感覚も、一例に挙げる。

「日ごろ、自分が楽しいと思っている行動を面倒に思ってしまうなど、衝動的に起こってくる感情もひとつのヒントです。疲れを自覚することができなくても、何らかの変化を見逃さないことが大事です」(同)

 隠れ疲労のサインをキャッチしたら、速やかに疲労回復に努めたい。だが、疲れをとるつもりの行動にも落とし穴がある(表)。

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