「もうひと踏ん張りだというときに栄養ドリンクを飲み、頭がさえて疲労が軽減されたような感覚を持つ方は多いと思います。実際には疲労回復効果は極めて低く、カフェインの覚醒作用によって、疲労ではなく疲労感が軽減されているだけです」(同)

 さらに、「ストレス解消のお酒」「精をつけるための焼き肉」はむしろ隠れ疲労を起こす原因だという。アルコールは気分を高揚させて、疲労感を紛らわしているだけで、疲れはとれておらず、焼き肉などの脂っこい食事は消化のために内臓に負担をかけるため余計に身体が疲れてしまうと指摘する。

 疲労回復には、疲労感をとるのではなく、疲労そのものの軽減を──。そのためには二つの方法がある。まずは日中の自律神経の疲れを軽減すること。

「イミダペプチドという成分が自律神経の疲労軽減に効果があります。鶏の胸肉に豊富に含まれているので、サラダチキンなどを意識して食べることをおすすめします。食べ続けることで疲れに強い体をつくることができますよ」(同)

 二つ目は、質の良い睡眠だ。睡眠の質と時間を確保して自律神経を休ませる。就寝前の入浴も大事なポイント。熱いお風呂につかるとぐっすり眠れると思いがちだが、体温が急激に上がるのを抑えようと自律神経が疲弊するので逆効果だ。

「寝る1、2時間前に、40度以下のぬるめのお湯で15分程度の半身浴。自律神経に負担をかけることなく、これでスムーズに入眠できます」(同)

 冒頭の56歳の男性は、休日の運動を控え、イミダペプチドを豊富に含む食事を毎日とり、入浴も半身浴に変えたことで疲労度が顕著に減少したという。

 放置すれば死を招く隠れ疲労。この機会に自分の生活を振り返ってみてはどうだろうか。

【意外!! 実は疲労をためてしまう行動】
1.追い込みたいときに栄養ドリンクを飲む
2.熱いお風呂につかる
3.仕事疲れのリフレッシュのために毎日の運動
4.精神的ストレスをお酒で解消
5.焼き肉やウナギを食べて精をつける

(本誌・秦正理)

週刊朝日 2017年12月8日号

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秦正理

秦正理

ニュース週刊誌「AERA」記者。増刊「甲子園」の編集を週刊朝日時代から長年担当中。高校野球、バスケットボール、五輪など、スポーツを中心に増刊の編集にも携わっています。

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