ゆず湯につかる男性。お風呂は気持ちよく、疲れがとれる(写真はイメージ)
ゆず湯につかる男性。お風呂は気持ちよく、疲れがとれる(写真はイメージ)
入浴のススメを説く新見正則さん(撮影・中川透)
入浴のススメを説く新見正則さん(撮影・中川透)

「手術、抗がん剤、放射線治療。これらにプラスして、がん患者さんには体を温めるように勧めている。腹巻きをする、冷たいものを食べない。そして、何と言っても入浴。シャワーでなくて入浴です」

【写真】入浴のススメを説く新見正則さん

 こう話すのは、帝京大医学部の新見正則・医学博士。ユニークな研究に贈られる「イグ・ノーベル賞」の医学賞を2013年に受賞した、外科医・漢方医だ。

 新見氏の外来では、がん患者に対して、次の五つの“些細なこと”の積み重ねを勧めているという。

(1)高たんぱくな食事
(2)運動
(3)体を温める
(4)漢方を内服
(5)希望を持ってもらう

 新見氏は言う。

「手術や放射線治療など、エビデンス(根拠)のある治療もある。だけど、僕はエビデンスのない治療もいっぱいやっている。エビデンスは明確でないけれど、専門家が『明らかに大切では』と思う、些細なことがあります。やらないよりもやった方が、はるかに元気になる人がいる。30年前には起きないと思っていたことが、起きているのです」

 入浴して体を温めるのも、こうした些細な習慣の一つ。新見氏はこう続ける。

「温めた方が、抗がん剤の副作用が減ることは明らかになっています。体は温めた方がよく、シャワーより入浴を勧めますが、大切なのは体感。普通の風呂と入浴剤を入れた風呂のどちらが温まるか。僕の体感は、入浴剤を入れた方が温まり、香りもあって快適。ただ、答えは一人ひとりにあるのです」

 新見氏が、些細なことを重視する姿勢は、「イグ・ノーベル賞」を受賞した研究とも関係するという。その研究は、心臓移植したマウスにオペラ「椿姫」を聴かせ続けると、生存期間が延びるという実験結果だった。ちなみに、尺八や津軽海峡冬景色では効果がなかった。

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