「従来の日中友好的な発想はもう成り立たない。中国を利用しつつ取り込まれない関係を作っていくべきです。対等で譲らない、お互いが利益を得られる範囲で淡々と付き合う。そういう関係性しかあり得ない」

 経済面でもチャイナリスクが高まるという。

「日中間は政治と経済を分けて考える『政経分離』が暗黙のルールだった。だが、習氏は国際協調主義を離れ、政治と経済を結びつけようとしている。中国における商業利益は、習氏の考え方一つで、ある日突然失ってしまう可能性がある」(野嶋さん)

 実際、台湾では中国と対立する民進党の蔡英文(ツァイインウェン)政権ができると、中国人観光客が大きく落ち込んだ。韓国では米軍の高高度迎撃ミサイルシステム(THAAD)の配備を巡って、中国と関係が悪化。韓国人俳優の中国映画やドラマへの出演が取りやめとなったり、韓国映画の公開が中止になったりした。韓国ロッテグループは、中国で百貨店やスーパーを展開していたが、当局の締め付けもあって撤退を迫られている。日本でも尖閣諸島問題が激化したときは、貿易の手続きが滞り、観光客が減るなど深刻な影響があった。

「中国との経済関係は、水道の蛇口みたいに中国側はいくらでも開け閉めができる。日本企業が持っている商業利益は『砂上の楼閣』だという、冷めた目で見ないといけない。習氏に権力が集中することで、そうした政治的リスクがますます高くなる」(同)

 前出の遠藤さんは、反日姿勢を強めるのではないかと懸念する。

「1期目は反日デモを抑え込んできました。反政府デモにつながるからです。権力がさらに強まる2期目になると、中国の外に敵を作る反日姿勢が鮮明になると思います。米国とは蜜月関係を築こうとしているが、日本との関係が悪化するのは恐れていない」

 習氏は世界第2位の経済大国のかじ取りを一人で担うことになる。失敗すれば、日本を含む全世界に悪影響が波及する。この現実に我々は向き合わないといけない。(週刊朝日編集部)

週刊朝日 2017年10月27日号