毛沢東は建国の父として知られる一方で、無理やり経済発展をしようとして失敗した「大躍進政策」(1958~61年)によって、数千万人ともされる餓死者を生んだ。自分の権力維持のために暴力的な大衆運動である「文化大革命」(66~76年)を死ぬまで主導し、社会に混乱をもたらした。

 こうしたことへの反省から、中国共産党は個人への極端な権力集中を避け、集団指導体制に移った。いまは習氏を含む7人の政治局常務委員が指導する体制となっている。政府や軍に強い権限を持っていた「党主席」は82年に廃止された。2人目の毛沢東は出ないはずだった。

 だが習氏は、一度は消え去ったはずの党主席というポジションを、いずれ復活させるのではないかとの見方もある。政治局常務委員会を主宰する総書記がいまは党の最高位だが、党主席が復活すれば習近平総書記が就任する可能性も一部で指摘されている。

 さらに今大会で習氏が狙っているとされるのは、慣例を破って、3期目の続投への布石だ。これまでの定年制のルールでは、68歳以上の幹部は党大会で区切りがつけば引退することになっている。習氏は現在64歳。5年後の党大会では69歳になる。2期目で習近平政権は終わるはずなのだが、定年制が変更または撤廃されるのではないかとの見方が浮上している。

 その見方について、前出の遠藤さんは、

「習氏は、自分がやらないと共産党が崩壊する恐れがあると思っている。これまで政敵の恨みを買ってきただけに、引退した後の報復を恐れているのかもしれない」

 と推測する。

 定年制変更のきっかけになるかもしれないのが、汚職摘発の担当で習氏の片腕でもある王岐山(ワンチーシャン)党中央規律検査委員会書記だ。王氏は現在69歳で、本来なら今回で引退する。しかし、次の指導部に残留するのではないかとの見方が出ていた。

 習政権と日本との関係は、これまでも良好ではなかった。尖閣諸島を巡る対立は改善されないままだ。毛沢東化する習氏と、日本はどう付き合っていけばいいのか。

 中国に詳しいジャーナリストの野嶋剛さんは、日中友好を支えた改革開放の路線が事実上終わり、日中関係はより厳しくなると見ている。

次のページ