家路を急ぐサラリーマン=港区のJR新橋駅 (c)朝日新聞社
家路を急ぐサラリーマン=港区のJR新橋駅 (c)朝日新聞社

 結婚しない男が急増している。国立社会保障・人口問題研究所の調べでは、「50歳まで一度も結婚したことがない男性」が今や4人に1人に。2035年には3人に1人になるとの試算だ。未婚・独身男がマジョリティーとなりつつある裏事情を探った。

「一人で生きていて今、非常に心地よい毎日を送ってます。多忙であっという間に過ぎていった感じはありますが、結婚するメリットや憧れはあまり感じませんね。山登りしたり、居酒屋に飲みに行ったりして、心の安らぎは十分得ています」

 こう語るのは北海道函館市在住で教育関係の仕事をしている独身男性Aさん(56)だ。Aさんは北海道出身だが主に首都圏で過ごし、慶応大学文学部卒業後、IBMに入社しシステムエンジニアとして約3年間勤務し、30歳を前に全国紙記者に転身。社会部警視庁担当のほか、カイロ特派員時代、イラク戦争を取材するなど国際派ジャーナリストとしても活躍した。50歳を前に病気療養中の母親の面倒を見ようと、函館市にUターンした、今はやりの地方移住者でもある。

 Aさんは現在の心境を「よく周りに『一人で寂しくないの?』と聞かれますが、全く感じません。彼女もいましたし独身主義者でもありません。お酒を飲むのが好きなので、居酒屋などに飲みに行けば、その場に集まった人たちと疑似家族的な付き合いはできます。周りの既婚者を見ても、家計の柱は夫なのに主導権は妻が握ってます。いびきがうるさいとか、トイレの蓋の上げ下げとか、妻の顔色をうかがう生き方をしているようにしか見えなくて、疲れると思う」と話す。

 趣味は山登りとマラソン。毎週1回は近くの函館山に登り、これまで地元のハーフマラソンにも3回参加するなど、「健康問題もなく、人生悔いなく生きてますよ」と言い切る。

 博報堂シニアプロモーションディレクターで、独身研究家でもある荒川和久氏はこう語る。

「Aさんのように『結婚できない』ではなく、『あえて結婚しない』層がいることを指摘したい。ちゃんと働いて、親などに金銭的な依存もしない。自由、自立、自給の価値観を持っている独身男性が世代を超えた特徴としてあります」

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