確かに、定年後にどう社会と接点を持ち日々過ごしていくべきかを指南する新書『定年後』(楠木新著・中公新書)が20万部を超える異例の大ヒットとなるなど、本屋を覗くと、「定年後の歩き方」や「100年人生マニュアル」など、中高年の生き方を問う特集を組む書籍、雑誌がやたらと目立つ。

 人口減少時代に直面し、「従来の結婚観や適齢期の変化の表れかもしれません」(荒川氏)。

 現在ベストセラーになっている直木賞作家、五木寛之著の『孤独のすすめ』(中公新書ラクレ)では「人間は孤独だからこそ豊かに生きられると実感する。孤独の素晴らしさを知る。孤立を恐れず、孤独を楽しむのは、人生後半期のすごく充実した生き方だ」との記述がある。

 これについて、荒川氏はこう見解を示す。

「孤独を楽しむことや一人が好きということに関しては大賛成です。ただ、それは自分の中の多様性を活性化するための手段。人と一切の関係性を遮断して心理的に孤立してしまうこととは別物です。孤独とは自分の能動的な選択肢として選べる自由があるものだと解釈したい」

 一方、牛窪氏は違った見方を示す。

「ある意味でやせ我慢と言ってみてもいいかもしれません。昔で言うと、高倉健さん風に『不器用なんで~』『だから素直になれなくて独身』と言ってみたり。いわゆる日本の恥や虚勢の文化こそが、40代以上のオジサンたちの可愛いところだと思っていますので、そこはなくしてほしくないし、『いい!』と感じる女性は若い子も含めて必ずいる。大事にしてほしいなあと思います」

 荒川氏の言う「こだわり」と牛窪氏の言う「やせ我慢」。

 Aさん同様に未婚の記者が「男の生き方の美学ではないか?」と、あえて強気に両氏に問うと、荒川氏は「美学と言うのはちょっと無理があるかもしれませんね」と苦笑。

 牛窪氏も「妥協したくない、生き方を変えたくない、という美学を持った中高年の未婚男性が多いという言い方はできます。ただ、結婚のためにはそれを変えるという柔軟性が高い人でないと未婚のまま残る、ということでもあります」と話した。

「結婚しない男」の急増は、“こだわりとやせ我慢”の狭間でもがいているAさんや記者のような存在自体が案外リアルな実相なのかもしれない。(本誌・村上新太郎)

週刊朝日 2017年9月29日号