運転免許について、高齢の親とどう話し合えばよいか。高知大学医学部精神科講師で、認知症専門医の上村直人さんに話を聞いた。

 日々どんな過ごし方をしてどこに出かけるか、食事はどうしているか、病院に通っているか、どんな薬を服用中かなど、親とのやりとりを密にして、よく知ることが何より重要という。

 そのうえで、上村さんは「住んでいる地域で自分らしく生活するために、どうして運転が必要なのか。その意味や目的を話し合ってください」と提案する。

 病気が原因で脳神経が変化したり、失われたりして、さまざまな症状が起きる認知症。アルツハイマー病だと目的地を忘れたり、距離感を把握するのが難しくなったりする。前頭側頭型認知症の場合、感情の抑制が難しく、信号や制限速度を守れなくなる恐れがある。病気によって、運転行動の問題も変わってくる。

 記憶力、理解力、注意力、空間認知能力、感情の抑制などに問題がないか。これらを確かめるため、上村さんは10項目の運転行動チェックリスト(下)を作成している。「チェックリストも親と話をするきっかけに活用してほしい」という。

 夏の帰省シーズンを迎え、離れて暮らす親に再会する人も多いはず。筆者も今夏に実家に帰った際、父の運転する車の助手席に乗り、免許について話をしてみようと思っている。

■運転行動チェックリスト
【1】行き先・目的地を運転中に忘れる
【2】中央線・センターラインの不注意
【3】車庫入れ・枠入れの失敗
【4】道路標識・信号機の理解
【5】速度制限・速度の維持
【6】交通標識への注意力維持
【7】運転操作(ブレーキ、ギアチェンジなど)
【8】自動車のメンテナンス(ガソリン、オイルなど)
【9】他の交通者への注意維持(歩行者、自動車など)
【10】車間距離の維持
(高知大学医学部精神科講師・上村直人氏作成)

週刊朝日 2017年8月18・25日号