小野寺さんのセアブラについて寮長の小杉哲也君(2年)は、

「暑くて食べるのがきつい夏場でも、これがあればご飯が進みます」

 と、にこやかに笑う。記者も食べさせてもらったが、水気のあるご飯にセアブラをまぜることでチャーハンのようなパラパラ感が出て、かきこみやすくなった。味もしつこくなく、ご飯3杯はいけそうだ。

 部員たちがご飯をかきこむ姿を見て、小野寺さんは笑みを漏らす。

「卒業生に『セアブラを送ってほしい』とせがまれることもあって、それはもううれしいですね」

 セアブラにはこんな“伝説”もある。

「3年の植田(拓)が試合前になると、清翔寮に来て食べさせてくれと言うので、彼が好きなあんかけそばにセアブラをまぜて出すんです。すると試合でホームランを打つ。甲子園に出発する直前にも同じものを出しました」

 植田君は165センチと小柄ながら、岩手大会で4本塁打を放った注目の打者だ。

「部員みんなの活躍を期待していますが、いつも通りのプレーをしてくれれば、と思っています」

 盛岡大付は大会2日目の第一試合で、昨夏の王者・作新学院とぶつかる。小野寺さんも甲子園に駆けつけ、アルプスで声をからして応援するつもりだ。(文・秦正理)

著者プロフィールを見る
秦正理

秦正理

ニュース週刊誌「AERA」記者。増刊「甲子園」の編集を週刊朝日時代から長年担当中。高校野球、バスケットボール、五輪など、スポーツを中心に増刊の編集にも携わっています。

秦正理の記事一覧はこちら