同院の高齢者医療センターでは多剤処方対策として、2015年9月から医師と看護師、薬剤師らがチームを組んで、「ポリファーマシー・フレイル回診」をスタートした。外科系の入院病棟を週に1回見てまわり、入院患者の処方薬の状況を確認。多剤処方が疑われるケースでは、患者や家族の同意のもと、薬をやめる、薬の種類を変える、量を減らすといった調整をしている。

 チームを束ねる医師で同センター長の横手幸太郎さん(千葉大学大学院教授)はこう説明する。

「各診療科でも薬の重複を確認していますが、日々の診療に忙しく、確認しきれないところがあります。そこでわれわれが横串を通すように、各科で処方されている薬について、重複がないか、慎重な投与が必要な薬はないかなどをチェックすることになったのです」

 チームで中心となって動く同センターの医師、石川崇広さんはこう言う。

「入院中は常に医師や看護師などがいるので、減薬を試みて何かあったときに素早い対応が可能。問題がないことを確認してから退院するので、患者さんやご家族も安心だと思います」

 退院後は、かかりつけ医などほかの医療機関が処方を引き継げるよう、「●●剤を減らしました」など状況を記した手紙(診療情報提供書)を送っている。

 新井さんらのまとめによると、同院に入院した65歳以上の患者の26%が10剤以上の薬を処方されていた。うち48%で、ベンゾジアゼピン系の睡眠薬など、15年12月に日本老年医学会が発行した『高齢者の安全な薬物療法ガイドライン2015』の中で「特に慎重な投与を要する薬物」とされた薬が使われていたこともわかった。

 現在、チームは回診のほか、ポリファーマシー外来も始め、他科から紹介された患者の処方薬の調整も行っている。

「患者さんの中には、『薬はたくさんもらうほどいい』と思っている方もいます。薬に対する精神的な依存や不安などへの理解や対応も、必要だと感じています」(石川さん)

次のページ