高齢者が特に注意すべき副作用と薬の種類(週刊朝日 2017年7月21日号より)
高齢者が特に注意すべき副作用と薬の種類(週刊朝日 2017年7月21日号より)

 年齢を重ねると体の不調が出てくるのは仕方がないが、薬の数が増えるほど、思わぬ作用で健康を害するリスクも高まってくる。高齢者で今、こうした「多剤処方」が問題に。無駄な薬はないか、かかりつけ医や薬剤師に相談してみよう。

 千葉大学医学部附属病院(千葉市中央区)の薬剤師、新井さやかさんは、内科の病棟に入院していた70代の男性患者のカルテをみて驚いた。

「上の血圧が80(mmHg、単位以下略)で、下が52。これは低すぎますね」

 2型糖尿病のほか、泌尿器の病気や高血圧などの持病もあった男性。ふらつきなど薬の副作用と思われる症状が出ていた。

 処方されている薬を新井さんがチェックすると、心臓の機能を保ち、血圧を下げる薬が3剤、胃腸系の薬が2剤、血糖を下げる薬が2剤、尿の出をよくする薬が3剤など全部で13種類23錠にものぼった。薬の内容を精査すると、尿の出をよくする薬には、血圧を下げる作用もあった。薬の相乗効果で思いのほか血圧が下がっていたようだ。

 男性は、薬の代謝にかかわる腎臓の機能も低下していたことから、新井さんは「少し薬を減らしたほうがいい」と判断。医師や看護師などと相談し、最終的に10種類15錠にし、また1剤あたりの服用量も減らした。

「男性は、退院時には上の血圧が120台まで上がり、ふらつきなどもなくなりました。薬を減らして持病が悪化することもありませんでした」(新井さん)

 この男性のケースは、今、高齢者医療で大きな問題となっている“多剤処方(ポリファーマシー)”の典型例だ。「その患者に必要な量以上に薬が処方されている状態」で、かえって健康を害することさえある。

 こうした問題が起きるのは、同院も含め、ほとんどの病院では診療科が臓器別に分かれているためだ。複数の病気を抱えている患者は、それぞれの診療科を受診し、治療を受けて、薬をもらう。その結果、薬の重複などが生じ、多剤処方になってしまう。

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