日産自動車のカルロス・ゴーン会長は6月27日の株主総会で、株主との質疑応答に入る前に「役員報酬の考え方をご説明したいと思います」と語り始めた。

 自身の報酬を前年比2.5%増の10億9800万円と公表。米ドル換算の額も述べ、海外グローバル企業トップの報酬額と比べて高くないことを訴えた。さらに、「当社の経営陣は競合他社も獲得をねらっている。競争力のある報酬を維持することで優秀な人材をつなぎとめなくてはならない」とも述べた。

 外国人の増加とともに、最近の大きな特徴の一つが業績に連動した支払いだ。

 大手商社の伊藤忠商事は、1億円以上の役員数が11人で2位。前年の3人から急増した。17年3月期に最高益を更新し、「更なる業績拡大に向けたインセンティブ(動機付け)」として役員に特別賞与が支給されるなどしたためだ。

 岡藤正広社長は報酬額が前年の約2倍の4億1200万円となり、前年の78位から25位に急上昇。同社は昨年、業績に応じて役員に株式を与える新たな報酬制度も導入している。

 ソニーの平井一夫社長も業績改善に伴い、前年の8位から6位に上昇。日本人で最も高額な報酬だった。

 経営層が国際化して報酬水準も全体的に上昇し、いわば役員報酬のベースアップ(底上げ)のような状態になってきた。一方で、従業員給与との差は広がる。

 例えば、ソフトバンクのアローラ氏の103億円は同社従業員の平均給与の888倍。1億円以上の役員が22人と最も多い三菱電機の株主総会では、こんなやりとりもあった。

 株主の男性が、高額報酬の役員が増えて従業員との格差が広がる傾向を懸念し、同社の役員報酬も増えていると指摘。支払いの考え方を尋ねた。経営陣は、他社の状況も踏まえて客観的な視点で「適正な報酬額を決めている」と説明。報酬額が1億円だとすると、従業員の平均給与の「12~13倍」と答えるにとどめた。

 株価が振るわない企業では、増加した報酬額について株主から苦言も出る。

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