ファミリーマートの一部では店頭で野菜の特売が行われている=東京都
ファミリーマートの一部では店頭で野菜の特売が行われている=東京都

 生鮮野菜までネットで買えるサービス「アマゾンフレッシュ」を始めたアマゾン。4月開始からわずか2カ月で対象地域を広げるなど、「順調に増加している」という。驚きと警戒感が広がる流通業界。そしてネット通販拡大で小売店はどう対抗するのか。今、食をめぐって大きな変化が起きている。

「アマゾンは本気で日本の市場をねらっている。スーパーなどは店頭での品ぞろえや価格で対抗できず、厳しい戦いになる」(ネット通信販売会社の幹部)

“黒船来航”に農業関係者も注目する。東京都多摩地域で野菜をつくる50代男性はこう話す。

「本を売っているアマゾンが、野菜まで扱うなんて考えていなかった。われわれは都心に近い利点を生かして、JAの直売所などで新鮮な野菜を販売してきた。ネットだと買い物に出かける手間が省けるので、若い客層が取られてしまう。『顔が見える』野菜を売ることで対抗するしかない」

 ネット通販の成長でスーパーが閉店し、店頭で野菜を買えなくなる。こんなことが絵空事とは言えない状況が、米国ではすでに起きつつある。

 アマゾンフレッシュは2007年に米シアトルでサービスを始め、ニューヨークなど主要都市に広げた。米国では自宅から遠い大型スーパーへ、車で買い物に出かける家庭が多い。食材をまとめて自宅まで届けてくれるサービスは好評で、利用者が急増している。

 あおりを受けたのが、小売り世界最大手「ウォルマート・ストアーズ」。大型スーパーなど全米に5千超の店舗網があるが、昨年1月に154店を閉じるリストラ策を発表した。ネット通販に顧客を奪われ、採算性の悪化が背景にある。

 日本でも通販に押されて書店が減ったといわれるように、小規模な小売店は淘汰(とうた)が進む。野菜・果実小売業の事業所数の推移をみても、個人の事業所は右肩下がり。大型店やネット通販との戦いに敗れ、街の小さな八百屋さんは次々と消えている。

 寂しさも感じるが、小売業は競争が特に激しい。消費者から支持されないと、生き残ることはできない。

 ネット通販の分野では、国内勢も元気だ。

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