大谷翔平選手の不在が濃厚なオールスターゲーム。長期離脱がわかっていながらも、ファン投票に参加させた日本ハムを東尾修氏は称賛する。

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 7月14、15両日に開かれるプロ野球のオールスターゲーム(14日はナゴヤドーム、15日はZOZOマリン)のファン投票の中間発表が5月22日から始まった。今年は3月開催の第4回WBCで活躍した筒香嘉智(DeNA)や山田哲人(ヤクルト)など、スター選手が開幕当初は本来の姿を発揮できていないとあって、どうなるかと注目していたが、やはり大谷翔平(日本ハム)は別格だったな。

 第1回中間発表で大谷はパ・リーグDH部門で2万7805票を獲得してトップに立った。ソフトバンクのデスパイネが本塁打と打点でリーグ屈指の成績を残しているが、大谷の1位は揺るぎないだろう。今季はわずか8試合の出場で左太もも裏肉離れのため長期離脱し、リハビリ中。それでもファンが1票を投じる。「大谷を見たい」という切実な思いを感じるよね。

 ファン投票終了時に野手は「10試合以上出場または20打席以上」の規定数に達していれば、出場資格を得られる。大谷の出場試合数は現時点で足りてはいないが、打席は32で規定をクリアしている。6月中に復帰を目指しているといわれるが、たとえ投手は無理でも、野手での出場資格はある。

 しかも今オフには、日米間で協議することになった新ポスティング制度でのメジャー移籍の可能性もあり、オールスターでのプレーは見納め、との見方もできるだろう。

 なぜ、4月上旬に故障した大谷を日本ハムはファン投票のマークシート用紙に記載したのか。私も西武の監督をしていたから聞いたことがあるが、日本野球機構(NPB)のマークシートの印刷は4月末から5月上旬だったはずだ。各球団がマークシートの記載リストを渡すのは、4月末くらいだと記憶している。

 そう考えると、その時点ですでに大谷が6月以降に復帰がずれ込むことは球団も推測できていたはずだ。それでもDH部門に大谷の名前を「推薦」したのだから、球団も大谷の存在価値、そしてファンが何を求めているかをしっかり考えていたということ。マークシートに塗りつぶす名前がなければ、わざわざ欄外に「大谷」の名前を記すファンも減るだろう。球団が少しでも「大谷を出したくない」と思えば、マークシートへの名前記載を見送ればいいわけだが、そうはしなかった。日本ハムの姿勢に拍手を送りたい。

 
 オールスターは選手がおのおのの特長を出し合う舞台だ。ホームランバッターなら、豪快な一発を狙えばいい。剛球投手ならば直球勝負でもいい。制球重視の投手なら、緩急もファンを喜ばせる要素である。ただ、最もスケールの大きいことをしでかす大谷という存在が現在のプロ野球界のオールスターにいなければ、物足りなさを感じるのは当然だよね。

 読者のみなさんも、開幕から大谷が不在で、どこか野球界に歯がゆさを感じたことはないだろうか。スポーツ新聞の1面を見たって、これまで1週間に2回くらい登場していた大谷の名前が消えていることで違和感がある。

 出場機会の少ない選手が球宴に出るのはいかがなものか、との意見もあるだろう。しかし大谷は別格。純粋にファンが見たいと思う選手がいなきゃつまらない。大谷もファンの声を受け止め、しっかりした状態で戻ってきてほしい。

週刊朝日  2017年6月9日号

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東尾修

東尾修

東尾修(ひがしお・おさむ)/1950年生まれ。69年に西鉄ライオンズに入団し、西武時代までライオンズのエースとして活躍。通算251勝247敗23セーブ。与死球165は歴代最多。西武監督時代(95~2001年)に2度リーグ優勝。

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