そんな中、女性も楽しめる場所にしようと考え出されたのが秘宝館だった。床が振動したり、展示物が客に迫るように見せたり。臨場感と娯楽性たっぷり。女性の社会進出が進む中、性についても気軽に楽しめるような空間をつくり出すのが目的だったようだ。

 日本のレジャーの多様化と相まって各地にオープンし、昭和50年代には北海道から九州まで20館以上あったという(第1号は昭和44年に徳島県にできた男女(おめ)神社秘宝館だったとの説も)。

「明るいエロス」と「笑い」を売り物に、各館が競うように大がかりな機械仕掛けを多用して妄想世界をつくり上げた。訪問者が近づくと、センサーが反応して人形の局部から水が飛び出す。「アア~ん」「ウフ~ん」などとなまめかしい声も出てくる。ギラギラした昭和パワー。もちろん、未成年あるいは18歳未満は入館禁止だった。

 佐賀県の嬉野(うれしの)武雄観光秘宝館には、ボタンを押すと振り返る「裸の女性」の人形や、男女が抱き合ったまま空を飛ぶ「性技の使者スーハーマン」もあったそうである。四十八手など性的好奇心をそそるような映像も上映。誰もが食い入るように見たにちがいない。科学万博で好評を博したという飛び出す立体映画(特殊な眼鏡をかけた)を売り物にした元祖国際秘宝館(三重県玉城町)は、地元テレビでCMも流していた。

 海外にもセックスミュージアムの類いは存在するが、日本の秘宝館は遊び心たっぷりに、性に関する文化を楽しめるという特徴があった。その意味では世界でも例がない。いっそのこと、世界文化遺産に推薦すればよかったかもしれない。

 世が平成に入ると、性産業の多様化や施設の老朽化に伴い、客足は徐々に遠のき、各地の秘宝館はバタバタと閉館していった。いまや熱海(静岡県)にしか残っていないという。

週刊朝日  2017年6月9日号