清宮選手 (c)朝日新聞社
清宮選手 (c)朝日新聞社

 早稲田実業の清宮幸太郎にとって、「人生において最初で最後のセンバツ。楽しみたい」という第89回選抜高校野球大会が開幕し、3月23日に初戦を迎える。

 相手は、馬淵史郎監督率いる明徳義塾。組み合わせ抽選会後、早実の和泉実監督と共に取材に応じた名伯楽には早速、あの質問が飛んだ。

「清宮を敬遠するか? カードが決まった時点で、そう質問されると思っておりました。全打席敬遠なんてしません。それをやったら松井に怒られます(笑)」

 馬淵監督は1992年夏、松井秀喜を擁する星稜(石川)と対戦し、5打席連続敬遠という奇策を講じ、勝利を手にした。あれから25年。61歳になった馬淵監督は、怪物スラッガーと対決する時ほど、策士としての血が騒ぐようである。和泉監督に対し、

「清宮君の大会でしょう。早実さんは優勝候補筆頭」

 と持ち上げ、怪物・清宮と、彼の後ろを打つ4番・野村大樹をこう分析した。

「飛距離がすごい。ボールのとらえ方がうまく、スタンドへの持っていき方を知っている。野村君は中学時代から知っていますが、右打者ながら右に大きいのが打てる好打者。清宮君と勝負し、野村君を敬遠するケースだって考えられます」

 早実とはロースコアの展開にはなり得ず、打ち合いになると予想する。

「攻撃的な野球を貫きます。ここ数年、下位打線は“試合進行係”みたいな選手が多かったんやけど、今年はつながりが期待できる。初回からバントなんてしません……と、言っておきながらバントしたら怒られるかな(笑)。早実さんも、清宮君にバントなんてさせないでしょ?」

 一方的に手の内を明かし、相手の動揺を誘う“心理戦”で、和泉監督も馬淵節に苦笑いだ。

「そこまでおっしゃるなら、清宮にセーフティーバントをやらせようかな(笑)。とにかく馬淵監督には見透かされているような気がしてなりません。試合まで、あまりお顔を見ないようにしたいと思います」

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