数多くの人のメンタルヘルスに関わった経験を持つ精神科医の西多昌規さん(スタンフォード大学医学部客員講師)は、ご機嫌化のための第一歩は、「“自分が今、不機嫌な状態にある”と気づく努力をすること」だと強調する。

「ご機嫌な人というのは、不機嫌な状態が良くないというのを知っている人。自分が安心して気を許している時こそ、甘えが生じて不機嫌になりやすいものです。不機嫌になれば、自分のみならず周囲も不快にさせることを理解して、なるべく不機嫌な時間を減らす努力をすべきでしょう」

 そのために最も重要なのは、周囲の人との関わり。孤独こそが最大の敵だと指摘する。

「いらっとすることは誰にでもある。ご機嫌でいるためには、悩みや愚痴も人に話し、なるべくためこまないことも大切です。“今日は腰が痛い”“店員の対応が悪かった”という小さなことでもいい。人に不機嫌の理由を伝えるためには、自分の中で不機嫌の理由をまとめる過程が必要。その中で整理される部分が大きいのです」

 日常生活で工夫できることもある。ご機嫌でいるためには、バランスの良い食事や適度な運動など、生活習慣を整えることも欠かせない。中でも前出の坪田さんが勧めるのが、一日の中で最低2時間は外に出て、太陽の光を浴びること。狙いは質の良い睡眠だ。

「ご機嫌でいるために生活で最も大切とも言えるのは、十分な睡眠です。睡眠力を高めるためには、ブルーライトの浴び方が大切です」

 ブルーライトは、照明や太陽光など身近な光に含まれる。昼は浴び、夜はさけるのが基本だ。

「目のブルーライトの透過性は年々悪くなるため、年をとるほど意識的に太陽の光を浴びて。日が暮れたら、なるべくブルーライトを浴びない。就寝前のスマホチェックはご法度です」

 氾濫する情報に惑わされないこともご機嫌力を高めるポイントだ。坪田さんは、何かを選ぶ時には選択肢を絞ることも、ご機嫌への近道だと明かす。

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