だが、語学に関しては、そうした欠点を克服するだけの「中高年の武器がある」と田代さんは続ける。

「語学は、外国人とのコミュニケーション。英語力も必要ですが、物事への理解力や一般常識、話す中身や、話題の予備知識が重要なんです。年とともに積み重ねてきた経験や知識が力を発揮してくれます」

 いくら単語の数を覚えたとしても、そうした知識がないと先の応用が利かない。逆に、記憶力が低下しても、日本語で体系的な知識があれば、意外にも単語はすっと入ってくるというわけだ。

「日本語で知っていることは、英語で聞かれても理解がスムーズですし、話しやすいんです。知識を元にした応用力が、衰えた記憶力を補ってくれる。これは若い人にはない強みだと思います」(田代さん)

 田代さんがオススメするのは、まず自分が得意だったり、興味がある分野に関する知識や情報を日本語で調べて体系的に整理して復習。それから専門的な英単語を覚えることだ。次に、その単語を使う場面をイメージして、英語を声に出してトレーニングするのが良いという。

「意味のない会話を流ちょうに話すより、よっぽど深い会話を外国人とできます。まして、何十年も仕事をしてきた専門分野なら業界の知識や動向にも詳しく、自信もあるはずです」(同)

 中高年の経験値があればこそ、コミュニケーションの手段として語学は武器になりうるのだ。

 定期テストや大学受験という明確なゴールがない中高年にとって、勉強を続けるモチベーションを維持するのは至難の業。どのような学び方だと、無理なく続けられるのだろうか。

 精神科医の和田さんは、60歳を過ぎてからの勉強では、「暗記(=インプット)」よりもアウトプットを重視することを提言する。

「テレビのクイズ番組で正解を連発するタレントさんを指して『頭がいい』などと評価する人がいます。ですが、情報や知識量にばかり目がいくと、勉強そのものが目的になってしまいます。大切なのは、学んだことを外に出していくことです。暗記とはひと味違う知識を身につけたいですね」

 年齢を重ねると、数字を丸暗記するような「単純記憶」よりも、意味ある事柄の記憶のほうが得意になる。アウトプットは、新しい知識について自ら説明することなので、意味のある記憶として身につきやすい。

次のページ