「がん検診を行う市区町村とそれを支援する都道府県のなかには、さまざまな受診率向上策を打ち出しているところがありますが、それがどう早期発見・早期治療に結びついているのか、またそれががんの死亡率低下をもたらしているのか、結果を踏まえて検討、評価していないところが多い。そうした分析が市区町村の行うがん検診対策には不十分です」

 そこで、それをわかりやすく示そうとしたのが、本誌が今回、算出したがん対策ランキングだ。具体的には、国立がん研究センターがん情報サービス「がん登録・統計」の「がん検診受診率」「精検受診率」「都道府県別死亡データ」と、同センターの「都道府県別がん死亡(2014)」を使用。5大がん(胃がん、大腸がん、肺がん、乳がん、子宮頸がん)について都道府県ごとに偏差値を算出した。

 その上で、がん検診受診率と精検受診率の偏差値の平均を計算。この「受診率偏差値」と、死亡率の偏差値から平均を求め、順位づけをした。胃がん、大腸がん、肺がんでは性差があることから、本来は男女別にしたほうが望ましいが、今回は誌面の都合上、男女合わせたものにした。

 ここから見えてくるのは、「がん検診の成果(検診受診率や精検受診率)ががん死亡率低下に貢献しているか」だ。受診率が高くて死亡率が低ければ、がん対策がうまくいっていると推測でき、受診率も死亡率も高ければ対策が不十分と考えられる。一方、受診率も死亡率も低ければ別の要素が寄与している可能性があり、受診率が低くて死亡率が高い場合は、積極的な対策が必要と推測できる。

 この表の見方には次の注意も必要だ。

 がん検診は市区町村で実施しているもので、ある地域が頑張っても、隣の地域が足を引っ張れば結果は相殺されてしまう。地域の取り組みが都道府県の死亡率に反映されにくいという側面もある。また、がん死亡率は検診だけでなく、その地域の医療機関のがん治療の質やがん予防の取り組みなどにも左右される。沖縄県に胃がんが少ないなど、地域性もある。

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