そんななかであえてランキングを作成したのには、こういうとらえ方ががん対策には必要だということがわかったからだ。埴岡氏がこう指摘する。

「国内では医療にまつわるさまざまな統計が報告されていますが、今はそれぞれの専門家が統計ごとに分析し、解釈するだけにとどまりがちです。そうしたデータに“横ぐしを通す”ことで、見えてくるものがあります。(このランキングは)100%完璧なものではありませんが、がん対策などの医療対策では本来、こうした分析を進めていくべきです」

 今回のランキングでは、がん検診の受診率だけでなく、精検受診率も加えた。これは、がん検診の受診者がいくら増えても、再検査が必要な人が精密検査を受けなければ、結局、早期発見・早期治療に結びつかないためだ。実際、基本計画の後に策定した「がん対策加速化プラン」でも、精検受診率が重視されている。

 さて、気になる結果を分析してみよう。

 がん対策ができているとトップ10入りしたのは、宮城だ。胃がんの精検受診率は94.8%で全国1位。大腸がん乳がん、子宮頸がんでもトップだった。同県のがん検診の事情について、国立がん研究センターがん対策情報センターの松田智大氏はこう解説する。

「宮城は、胃がん集団検診の普及に尽力した“がん検診の父”と言われている宮城県対がん協会の黒川利雄医師の影響が大きく、がん検診に熱心です」

 山形、長野は四つのがんでトップ10以内に入った。

「山形は宮城と同様、質の高い検診をしっかり実施している」(松田氏)。がん対策の先進県で長寿県でもある長野は、本調査でも上位に入っていた。

 一方、がん検診の成果が実を結んでいないと考えられるのが、北海道。すべてのがんでワースト10入り。検診受診率、精検受診率ともに低めで、とくに子宮頸がんの精検受診率は43%と、宮城の半分以下。死亡率は3.7%と高くなっている。北海道は先の総務省の結果報告でも問題があった地域として名前が挙がっている。対策が十分でない理由として、「医療従事者の層が薄い、がん検診の専門医が少ない、土地が広いので全体に浸透させるのが難しいという声が上がっている」(総務省)という。

次のページ