堺屋:いやいや。それはともかく、日本の本当の危機は2020年、オリンピック・パラリンピックが終わったあとだと思います。そこで何もなければ、日本は成り立たなくなる。

林:「オリンピック・ロス」になっちゃうわけですね。先生はオリンピックにもかかわっていらっしゃるんですか。

堺屋:いえ、かかわっていません。いまのオリンピックのもたつきを見てると、ちょっと気の毒になります。

林:あれは誰がいけないんですか。

堺屋:役人に任せると、あんまりうまくいかないんです。官僚は2年くらいでポジションが変わるでしょう。責任あるプロデューサーが必要なんです。

林:先生はかつて大阪万博(70年)を大成功させましたが、当時の先生のような方が必要なんですね。

堺屋:いま、2025年に万国博覧会をもう一度大阪でやろうという話を、熱心に進めているんです。

林:お話はかなり進んでいるんですか。

堺屋:進むと思いますよ。安倍首相も誘致するつもりだと国会で答弁しましたから。

林:でも先生、大阪の人はあまり乗り気じゃないという話を聞きましたが、ほんとですか。

堺屋:乗り気じゃないとは思いませんが、会場に異論がある人はいると思います。夢洲(ゆめしま)という埋め立て地が候補地になっていますが、万博に間に合うように工事を進めるには200億円以上の追加費用がかかる。万国博は伝統的に前回と同じ会場を何度も使うことが多いので、そのほうがいいという人も多いんです。いま、パリも立候補していて、競合するんです。

林:勝ち目はどうなんですか。

堺屋:半々だと思いますね。パリもかなり大きな計画を立てていますから。前回の大阪万博は「人類の進歩と調和」というテーマだったんですが、実際のコンセプトは第3次産業革命。日本が規格大量生産社会を実現したことを知らしめるものだった。次の万博では第4次産業革命を見せることになりますが、人工知能やロボットだけじゃなく、それによって世の中がどう変わるかというところを見せたいと思っています。

週刊朝日 2016年12月23日号より抜粋