文科省の有識者を集めて開いた「『もんじゅ』の在り方に関する検討会」では、当初は廃炉も選択肢のうちに入っていたが、いつの間にか存続ありきの議論に切り替わった。今年5月に方向をまとめた報告書でも廃炉には踏み込んでいない。

 ところが9月21日の原子力関係閣僚会議では、一転して菅義偉官房長官が「高速炉開発会議で本年中に廃炉を含めた抜本的な見直しを行う」と発言。突如として再び廃炉が現実味を帯びてきたのだ。なぜなのか。全国紙記者が解説する。

「政府がもんじゅを動かし続けた場合の費用を試算したところ、今後10年で約6千億円との結果が出ました。すでに1兆2千億円を使っています。文科省はまだ存続の道を探っているとはいえ、こんなにカネを食うようでは国民の理解が到底得られないと官邸サイドで判断したようです」

 決断の時期を12月としたのは、地元対策や総選挙のタイミングを見据えたものだと分析するのは元経産官僚の古賀茂明氏だ。

「3カ月あるのは、それまでにもんじゅの地元福井県と再処理施設のある六ケ所村が納得するような仕組みを作れと官邸主導で話が進んでいるのではないか。それに年明けともいわれる総選挙前に『文科省や原子力村の反発が強いなかで安倍首相が遂にもんじゅの廃炉を決断した』という絵を見せれば、選挙で有利に働きます」

 もんじゅが廃炉になれば、一向に動かない核燃料サイクルを続けるために無駄な税金を使わずに済むが、実際には何も変わらないと古賀氏は続ける。

「経産省は原子力政策全体の中で腐った重要パーツであるもんじゅを切り捨てることで、原発政策を維持できるように仕向けました。それにもんじゅがなくても核燃料サイクル維持に困らないのは、フランスが開発中の高速炉『アストリッド』プロジェクトに日本も参画しているからです。国の核燃料サイクル計画は今までどおり続き、経産省、文科省にはプロジェクトを通して大きな利権が生まれる構造になっているのです」

次のページ