──「ソニック・ブーム」(09年)が全米チャート2位、「モンスター/地獄の獣神」(12年)など、KISSのアルバムは最近作のほうがむしろチャート上位に入っています。

 その通りだ。我々が企画している船上クルーズ・ライヴ「KISS KRUISE」には世界39カ国からファンが集まって盛り上がる。ブルーレイ/DVD「キッス・ロックス・ヴェガス」はアメリカで3週連続1位となっている。ラスヴェガスのKISSゴルフ・コースやKISSリムジン・サービスも順調だし、コンドームや棺桶まで、KISSの名前を冠した商品の数は5千に上るんだ。さらにロック&ブリューズ・レストラン・チェーン、映画会社、出版社、コミック……。ビジネスは拡大する一方なのさ。

──ビジネスの中で、あなたたちの“本業”であるCD/レコードはむしろ不採算部門なのではないですか?

 確かにアルバム・セールスは以前と比べると落ちているし、チャート・ポジションが上位であっても枚数は減っている。ただ、不採算部門というほどではないし、利益は出ているよ。それに忘れてはならないのは、KISS関連グッズが売れ続けているのは、俺たちがロック・バンドだからだ。ファンはKISSの音楽を聴いて、ライヴを見て、グッズを手にするんだよ。

──KISSのライヴ・コンサートは“KISSブランド”のプロモーション的な意味もある?

 そういう部分もあるけど、些細なものだ。“ベストを求める者に、ベストを提供する”。それがKISSのモットーなんだ。一人のミュージシャンがギターを弾き語りする地味なコンサートと同じチケットの値段で、KISSは大音量のロックンロールと炎とスモーク、紙吹雪を提供する。ケチっても仕方ない。赤字にさえならなければ、どデカいパーティーのほうが楽しいだろ? それにKISSには世界中のファンに愛される数々のヒット・ソングがある。ライヴが終わって「お気に入りの曲を演らなかった……」と肩を落とすファンを一人でも減らすために、俺たちは時間制限ギリギリまで曲を詰め込むんだ。

──あなたは才覚あるビジネスマンだが、ソロ・アルバムを「アスホール」(=ケツの穴)と名付けたことは、ビジネス的な判断として正しかったでしょうか?

 ビジネスのことは考えなかった。それより自分の直感を信じたんだ。太ったコメディアンはステージに上がると、まず「デブです」って自虐ネタで笑いを取るだろ? それと同じで、誰かに「あいつはケツの穴みたいな野郎だ」と言われる前に自己申告しておいたんだ。CDを店頭に置いてくれないショップも一部あったけど、幸いファンは洒落をわかってくれて、アルバムの売れ行きは好調だったよ。

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