──あなたはインディーズ・バンドのメルヴィンズを前座に起用したり、彼らのドキュメンタリー映画「ザ・コロッサス・オブ・デスティニー」でインタビューに応じるなど、必ずしもビジネスの損得勘定だけでは動いていませんよね?

 メルヴィンズはそれほど若手というわけではないけど俺たちより下の世代だし、KISSの音楽に敬意と愛情を持ってくれる。母親が赤ちゃんから見返りを求めないのと同じで、新しいバンドを手助けしたいんだ。誰もがタダで音楽をダウンロードする時代、バンドが生き残るのは難しいからね。俺たちだって金儲けばかり考えているわけじゃない。みんなと同じかそれ以上、音楽を愛しているんだ。

──あなたの長年の相棒ポール・スタンレーが一番好きなKISSの曲は「ラヴ・ガン」だそうですが、あなたはどうでしょうか?

 ポール? 誰だそれは? 冗談だよ(笑)。ポールとは43年の仲なんだ。君の質問に答えると、「デュース」が一番のお気に入りだな。この曲は何度もツアーで1曲目にしてきて、特別な思い入れがあるんだ。音楽は人生のサウンドトラックだ。曲の良さというだけでなく、その曲にまつわる思い出によってさらに輝きを増すんだよ。俺にとって「デュース」は思い出の詰まった曲なんだ。(取材・構成 山崎智之)

週刊朝日  2016年10月28日号