本誌10月7日号の表紙を飾った西内まりやちゃんにKISSメイクを施し、ご機嫌のジーン・シモンズ(撮影/小暮誠)
本誌10月7日号の表紙を飾った西内まりやちゃんにKISSメイクを施し、ご機嫌のジーン・シモンズ(撮影/小暮誠)
KISSの約40年間の歴史を約100点にのぼる貴重な数々の展示アイテムでたどる世界初のKISSオフィシャル展覧会「KISS EXPO」は、ラフォーレミュージアム原宿(東京都渋谷区)で10月31日まで開催中。入場料は一般1600円、学生1000円(撮影/関口達朗)
KISSの約40年間の歴史を約100点にのぼる貴重な数々の展示アイテムでたどる世界初のKISSオフィシャル展覧会「KISS EXPO」は、ラフォーレミュージアム原宿(東京都渋谷区)で10月31日まで開催中。入場料は一般1600円、学生1000円(撮影/関口達朗)

 伝説のモンスターバンド「KISS」のベーシスト&ボーカルのジーン・シモンズは、ステージで血を噴き、火を吐く“ゴッド・オブ・サンダー”だ。今秋、来日した彼をインタビューすると、ド派手なメイクの裏側に、ロックを多角経営する凄腕プロデューサーの素顔が見えてきた。

──ボブ・ディランのノーベル文学賞受賞について、コメントをお願いします。

 ボブは賞を受けるにふさわしいアーティストだ。彼のことは知っていて、一緒に曲を書いたこともある。「ウェイティング・フォー・ザ・モーニング・ライト」という曲で、俺の「アスホール」(2004年)に収録されているよ。電話して「一緒に曲を書かないかい?」と誘ったらすぐに家に来てくれて、曲を仕上げるのに2時間もかからなかった。ボブが素晴らしいのは音楽の才能だけでなく、他人にどう思われようが自分の道を貫くことだ。1960年代に彼がエレキ・ギターを手にしたとき、フォークを求める観客はブーイングを飛ばした。でも彼はそんな批判に耳を貸さず、自分が信じる音楽をプレイしたんだ。

──あなたのビジネス指南書『KISSジーン・シモンズのミー・インク』(日経BP社)に書かれていることは基本的なことですが、あなたに言われると説得力を増しますね。

 休日をダラダラ怠惰に過ごしている人もいるけど、怠けていても楽しくないだろ? 何かをしていれば退屈しない。いたって単純なことだ。ただテレビを見て、ビールを飲みに行くだけでは、金を消費するだけだ。その逆に自分を磨いたり、在宅ビジネスを始めて、その結果として金を儲ければ、女の子だって寄ってくる。

──KISSが世界的な大成功を収めた70年代中盤にはピーター・フランプトンやフリートウッド・マックなどのヒット作が発売されました。しかし、現在の音楽ビジネスはかなりの規模縮小を余儀なくされていますが、KISSはどう対応していますか?

 まず言っておきたいのは、70年代のブロックバスター時代はKISSが始めたということだ。「地獄の狂獣キッス・ライヴ」(75年)を2枚組にしたのは、ファンにより多くのものを提供したかったからだ。1枚のアルバムでは物足りない。ガールフレンドが1人、ポテトチップスが1枚では物足りないのと同じだよ(笑)。俺たちが2枚組ライヴ・アルバムを1枚の値段で提供したことで、いろんなバンドが真似するようになった。それから40年を経て、音楽ビジネスは危機的な状況にある。それはインターネットのせいもあるし、カリスマとスター性の不足のせいでもある。エルヴィス・プレスリーやビートルズ、ローリング・ストーンズ、U2、AC/DC、そしてKISSは誰でも名前を知っている。では現代のバンドは? フー・ファイターズは素晴らしいバンドだけど、街を往く人がデイヴ・グロールを知っているか? おそらく知らない人が多いだろう。

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