終身雇用と年功序列型の日本社会の象徴、正社員が将来的に消えてしまう……。前出の柳川教授の解説。

「人口逆ピラミッド問題などで、会社が終身雇用を維持するのは、限界にきている。技術革新した20年後、どれだけの会社が生き残っているでしょうか? 今後は倒産、リストラなど正社員であっても安泰ではない。今までと違う働き方、安心が模索されるでしょう」

 会社がプロジェクト型の組織になれば、働き手は自分の希望に応じたプロジェクトを選択することが可能になる。複数の会社で、複数のプロジェクトに同時に従事するというケースもあり得るという。

《仕事内容に応じて、一日のうちに働く時間を自由に選択するため、フルタイムで働いた人だけが正規の働き方という考え方が成立しなくなる。(略)パートタイマーという分類も意味がないものになる。さらに兼業や副業、あるいは複業は当たり前のこととなる》

 そして最近、こうした未来予想図へ近づこうとする企業の動きが目立っている。
 中でもソフト開発大手、サイボウズの取り組みは、「時間や空間に縛られない働き方」の手本といえる。

 同社の「選択型人事制度」では、勤務時間と勤務場所を段階的に組み合わせた9種類の働き方があり、ひと月ごとに選択し直すことが可能だ。

 たとえば「今月はオフィス勤務の時間を長く、在宅勤務を少なくしよう」「来月はオフィス勤務を短く、在宅勤務をやや多めにしよう」という具合に、その時々のライフスタイルに合わせて働き方を柔軟に選べるのだ。このように時間や場所に縛られず働くことができれば、家事や育児、介護などと仕事を両立しやすく、副業もしやすくなる。

 同社は06年からこうした働き方の改革を実行し、12年からは社員の副業も全面的に支援。会社に損害を与える仕事でなければ、何をするのも自由で上司に報告する必要もない。給与は転職相場などから独自に算出され、定年はない。しかし、退職金も出ないという。

「50歳を過ぎると給与は下がる傾向に。社員には会社に頼らなくても生きていけるよう自立することを求めています」(同社広報)

 2月にはロート製薬が社員の副業を認める「社外チャレンジワーク制度」を発表し、話題となった。

 その一方、創業当初から「専業禁止」の方針を打ち出した会社もある。

 11年にオールアバウトから新設分割し、インターネットサービス事業を展開するエンファクトリーだ。加藤健太社長はこう語る。

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