「実際は副業を強制しているわけではなく、副業の機会を提供しているだけです。サラリーマンでは決して持ちえない経営者目線が身につきますから。そうなると社員一人ひとりが成長し、会社にとってもプラスになります。つまり私たちが副業を勧めるのは、飲食店のバイトなどではなく、自分で商売をしてほしいということです」

 実際、同社の社員になってから個人事業を始める人は多い。その一人、山崎俊彦・ショッピングユニットCSマネジャーは、人気犬種パグの衣類などを受注生産するネットショップの経営者だ。開業から2年半を経た今年8月に法人化を果たした。

「副業の規模が大きくなると、普通は会社を辞めるものかもしれませんが、私は辞める気はありません。エンファクトリーにいる限り副業は自由にできますし、社員の安定性はやはり魅力です」(山崎さん)

 同社は裁量労働制、フレックスタイム制で、出社・退社時間は決まっていない。業務時間中に副業をするのも自由だ。唯一のルールは、半年に1回、全社員の前で自分がどんな副業をしているか発表すること。飲食を伴うフランクな発表会が、「副業に対するすべての懸念を払拭する」と加藤社長は言う。

「副業をコソコソやっていると社内の目も厳しくなりますが、オープンにすれば、他の社員たちの刺激にもなるし、応援してもらえる。そうなると、本業で成果を出さなければカッコ悪い。副業をオープンにすることで、本業をサボれなくなるという効果があります」

 自由に副業ができる分、本業でいっそう結果が求められるわけだ。この発表会には、他社の人事担当者も見学に訪れるという。

 そして「時間や空間に縛られない働き方」の一環として、「リモートワーク」を導入する企業も増えているという。

 リモートワークとは、自宅やカフェなど、オフィス以外の場所で仕事をすることだ。リクルートホールディングスは、今年1月から全従業員を対象に上限日数のないリモートワーク制を導入。グループ全体で約2千人が活用している。また、トヨタ自動車は1万人規模の社員を対象に今年10月から週1日、数時間だけ出社すれば、自宅や社外などで働ける在宅勤務制度を拡充することを発表。三井物産、ホンダ、日本マイクロソフト、リコーなども試験的に在宅勤務を取り入れる。

 だが、一方でこうした自由な働き方が許容され、会社の管理が緩くなると、懸念されるのは、社員の転職へのハードルが低くなることだ。多くの企業が副業解禁に消極的なのは、ひとつには人材流出を恐れるからと指摘されるが、杞憂のようだ。前出のサイボウズは、かつて離職率の高さが問題となり、06年から働き方の改革に取り組んだ。

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