同社は13年から全国一律総額3万5千円で法要などに僧侶を派遣する「お坊さん便」のサービスを始めた。15年12月からはネット通販サイト「アマゾン」で手配チケットの販売を開始。これに対し、伝統仏教の各宗派が加盟する全日本仏教会が「宗教行為を定額の商品として販売することに大いなる疑問を感じる」と販売停止を申し入れるなど、物議を醸している。前出の秋田副社長はこう語る。

「既存の檀家(だんか)さんとお寺との関係を崩そうなどとは考えていません。ただ、日本人の宗教観が変わってお寺との関係も薄れていっている一方で、やはり習慣としてお坊さんを呼びたいという方はいる。そうした方に対して、手段を提供しようという考え方です」
 
 こうした動きが示すように、今、葬儀や墓にまつわる新サービスが次々と生まれ、さながら「エンディング産業ブーム」の様相を呈している。「今は100年から150年周期で訪れる葬儀やお墓の流行の転換期です」と語るのは、日本葬祭アカデミー教務研究室代表で、葬祭カウンセラーの二村祐輔氏だ。

 二村氏によれば、日本人の葬祭の形はこれまでも土葬から火葬へ、個人のお墓から家族のお墓へなどと、時代ごとに変化してきた。そして今、再び大転換期を迎えているという。

「団塊の世代の多くは田舎から都会へ出てきて、故郷が違えば両親それぞれのお墓が別々の地域にある。両家の墓をまとめて都心につくり直したいという需要が増えた。ところが都心は深刻な墓不足で、都心の寺院では数百万円から1千万円超になるほど墓の価格が高騰。郊外の公営墓地もどこも満杯で、遺骨を家に保管したまま途方に暮れている人も多いのです」

 確かに、都心の墓不足は深刻なようだ。8月25日に発表されたばかりの東京都立霊園の今年度の抽選結果を見ると、都立多磨霊園の一般墓地はどれも倍率2~3倍。同園敷地内にある遺骨の長期収蔵施設「みたま堂」は30の募集に対して968件の応募があり、倍率はなんと約32倍だ。都立小平霊園が12年から募集を始めた自然葬式の合葬墓地「樹林墓地」は、遺骨1体用の生前申し込みで募集88に対し1768件の申し込みがあり、こちらは約20倍だ。

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