放送作家でコラムニストの山田美保子氏が楽屋の流行(はや)りモノを紹介する。今回は、「疲労回復のためのコーヒー」について。
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オリンピック、パラリンピックの時期になると思い出す著名な元大学院教授がいる。日本人選手がもっとも多くの金メダル、16個を獲得したアテネ大会の際、日本オリンピック委員会(JOC)のサポートメンバーのお一人として尽力していらした「ドクターアミノ」こと大谷勝氏だ。
東京大学大学院でアミノ酸製法研究に長年携わり、全盛時の北島康介や室伏広治が「ドクターアミノ」によるサプリを利用していたことは有名だった。
そんな大谷氏がタクシー会社の要請を受け、プロドライバー向けに監修したアミノ酸配合缶コーヒー、その名も「英雄(ヒーロー)回復」(1缶185グラム)がこのほど、リニューアルされた。
長時間運転するドライバーの集中力と回復力を維持するためにアミノ酸を配合。カフェインが少なくてもコーヒー感のあるスッキリした味が評判だったが、「さらにコーヒーらしくなった」と大谷氏は胸を張る。
実は氏は、タクシードライバーの健康管理に長年携わっていて、ドライバーの多くが一日に複数の缶コーヒーを摂取していることに目をつけた。
アスリートの疲労回復や集中力維持にかかわる知見をドライバーにも体感してもらうため、集中・疲労回復系アミノ酸(BCAAとアスパラギン酸)を1千ミリグラム配合。健康管理と安全運行の視点から開発したアミノ酸配合コーヒーなのである。
しかも、実際に一日2本、1週間続けて飲むことにより、肉体疲労が軽減するだけでなく、肩こりや集中力の低下を抑える傾向を示した……というのだから驚きだ。
ドライバーたちの口コミでどんどん評判が広がり、複数のタクシー会社に加え、一部高速道路のサービスエリアやパーキングエリアにも置かれるようになったため、長距離トラックのドライバーからも指名買いされているとか。
実はテレビ局でも、中継車やロケバスのドライバーらは、タクシーやトラックの運転手同様、勤務シフトや走行時間によっては、過労や寝不足と闘っている。
4月に大型バスの運転もできる大型自動車第2種免許を取得し、仕事のない日はロケバスのドライバーをしている、お笑いコンビ「天津」の木村卓寛も「英雄回復」に注目していると聞く。一発屋の汚名を返上してもらいたいものだ(笑)。
年内には好事家には欠かせないブラック味も発売されるという。
※週刊朝日 2016年9月16日号