最後のテーマは「自信」だ。陸上の代表が決まる6月下旬の日本選手権。100メートルの桐生祥秀(東洋大)は10秒01の自己ベストを持ちながら、ベスト記録で下回るケンブリッジ飛鳥、山縣亮太に後れを取り、3位でフィニッシュ。出場権は勝ち取ったものの、レース後の会見では冒頭の笑みが一転、「こんなかたちで内定するとは……」と唇を噛み、むせび泣いた。

 男子卓球のエース、水谷隼(ビーコン・ラボ)は6月中旬のジャパンオープン荻村杯で世界ランク1位の馬龍(中国)と対戦し、ストレート負け。直後の取材でこうこぼしている。

「一番の反省点はメンタル。中国選手が相手だと意識して、考えてしまう。誰とやっても自信がないんです。勝っても勝っても、自信が増えない」

 気持ちの持ち方を含めて、本番にはベストな状態で臨んでほしいもの。僭越ながら本誌も何か手がかりはないものか、専門家に聞いてみた。

 中京大スポーツ科学部の山田憲政教授(運動制御・運動学習)によると、作戦や考えることが実は落とし穴になる、というのだ。

「とくに速い敏捷性でやる競技は反射神経の勝負。すでに技術はある。ただ『相手がこう来たらこうやる』などの作戦や、相手がどこの国の誰とか、考えてはダメなんです。ただ〝反応〟する。注意を自分の内面にではなく、外側に、相手や球の動きだけに向け、反応することです」と山田教授。

 追手門学院大の児玉光雄客員教授(スポーツ心理学)も「結果に過剰反応するのをやめる。ファンや協会関係者などの周囲の期待にも応えようとしないこと。ただ練習でやってきたことを精いっぱい出す。置かれた状況でベストを尽くせ」とエールを送る。

 これからは本誌も応援入り。頑張れ、ニッポン! でも気にするな!(本誌・鳴澤 大、太田サトル、山内リカ、秦 正理、吉﨑洋夫/岸本貞司、韓国在住ジャーナリスト・菅野朋子)

週刊朝日  2016年7月22日号