「現役入学志向が顕著になる一方、大学に合格しながらあえて再チャレンジする『合格浪人』は増加傾向にあります」

 では、従来の「合格者数」と「実合格者数」の差をどう見るか。合格者数は多いのに実合格者数が少ない学校は、合格実績が、複数の学部に受かる一部の優秀な生徒だけに偏っていることを意味する。高校の説明会などでアピールされる「難関大への合格者数」だが、その学校の本当の実力は、実合格者数を見ないと判断できないということだ。

 では、「早慶上理」の実合格率ランキングを見てみよう。上位校には女子学院(1位)、浅野(2位)、早稲田(3位)など私立校が多く並び、日比谷(4位)、西(15位)など公立の伝統校も健闘する。

 そんな中、昨年のランキング圏外から今年大きく実績を伸ばしたのが、2006年に付属中学を開校した両国(41位)だ。中学開校以来、一貫して取り組んでいるのは「志(こころざし)学」。副校長の笠原聡教諭はこう説明する。

「卒業後の人生について、冷静に実社会を見つめ、どのように活躍していくのか自分なりの『志』について考えさせます」

 同校では、多彩な意見で活発に議論し、学びが立体的になるような指導に力点を置いているという。

 キャリア教育にも注力する。中学時から職場体験を導入。消費者としての目線だけでなく、社会構造そのものへ意識を向け、働くことを主体的に体感させる狙いだ。

「その体験を高校生になってからの自己分析へと深め、適性を考えた進路希望と志望校につなげていきます」

 ユニークなのは卒業生の常駐制度だ。大学入学後間もない卒業生が、週2日、母校に来て、在校生の質問に答えてくれる。ロールモデルが身近にいることで、生徒たちはより具体的に将来について考えるきっかけになるという。

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