協会幹部は貴乃花親方について「これまでも何度か、そういう場面があった。普段は寡黙で他の理事と世間話もしないが、怒った時の勢いはものすごい。普通に議論ができないところがある」と語る。

 そんな貴乃花親方はある“変化”で周囲を驚かせた。3月3日、大阪市内のホテルで開かれた貴乃花一門の後援会パーティーで、頭髪をバッサリ切り落とした丸刈り姿で登場したのである。司会者から理事長選について話題を振られると、こう語った。

「誰が理事長になっても、(相撲という伝統文化を)次の世代に残せればよろしいかと思います」

 泰然としたコメントでけむに巻いたが、この数日前、周囲には頭を丸めた理由について「“気迫”のため」と漏らしたという。

 貴乃花親方は2月、その“気迫”についてこうもメールに綴っている。

≪改めて人生には気迫が必要だと実感いたしました、汗と涙 二つの量は一定で、涙も乾き汗も乾く、気迫を持って腹で涙し腹で汗かき、どうせの人生笑って過ごす!それが富士の山なり嵐なり!≫

 勝負師としての闘争心に火がつきつつあるようだ。実は今、協会トップである理事長の座をめぐり、水面下で激しい火花が散らされている。理事長は春場所後の3月28日に行われる理事会で、10人の理事による互選で決まる。事実上、昨年11月に急逝した北の湖前理事長の後任である八角理事長と、協会ナンバー3の貴乃花親方との一騎打ちになるとみられているのだ。

 前述のパーティーでは、貴乃花親方に同調する若手親方に交じり、特異な“後援者”たちの姿も目を引いた。一人は「ナニワの石油王」の異名を持ち、1990年代に政官界との癒着が問われた「泉井事件」で実刑判決を受けた元石油商の泉井純一氏。現役時代からのタニマチで、貴乃花親方は周囲に「親代わりのような人」と語っているという。

 もう一人は協会元顧問で、北の湖前理事長の「右腕」として協会の事務方を取り仕切ってきた50代の経営コンサルタント・K氏。K氏は壇上で激賞のあいさつも行った。

 K氏について、協会の内情を知る関係者はこう評す。

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