引退会見での澤。自ら椅子を片づけるなど謙虚だった (c)朝日新聞社
引退会見での澤。自ら椅子を片づけるなど謙虚だった (c)朝日新聞社

 2011年サッカー女子W杯で主将として日本を初優勝に導いた澤穂希選手(37)が今季限りでの引退を発表した。“なでしこ”のレジェンドの突然の引退をベテラン記者に解説してもらった。

 引退理由を「心と体が一致してトップレベルで戦うのが、だんだん難しくなってきた」と語った澤だが、なぜ今だったのか?

「キャリアに傷を付けないタイミングを考え、開催中の皇后杯で主力として戦って優勝して引退、という華のある最後を願ったんでしょう。15年のW杯での起用からして、現役続行してリオ五輪代表に選ばれたとしても途中出場。野球でいえば先発ではなくリリーフ役で、そもそも代表に選ばれない可能性もある。そうなってから引退するのは寂しいでしょ。『澤穂希にしかできないこと……』という言葉に象徴されてますが、彼女には強烈なプライドがありますから」

 そのプライドを記者は引退会見全体に感じたとか。

「テレビ関係者が仕切り、1時間も話したのに彼女が言いたいことだけ言った感じで、計算されていた」

 今後について、指導者にはならないと言い続けてきた澤が「やりたい気持ちになるかもしれない。そのときの気持ちを大切にしたい」と語ったため、“澤なでしこ監督”と大見出しを付けたスポーツ紙もあった。

「あれは誘導尋問っぽかった(笑)。監督候補には本当の意味で日本女子サッカーを切り開いてきた方々が列をなしてますが、地味なので、マスコミやスポンサーは、澤なら盛り上がる、と思ってますからね。本人はずいぶん前から、20年の東京五輪と招致中の23年女子W杯に関わりたいと言ってたし、サッカー協会幹部も同様のことを言ってますから、そんな青写真があることは間違いないですよ」

(本誌取材班=上田耕司、亀井洋志、小泉耕平、永井貴子、長倉克枝、永野原梨香、鳴澤大、西岡千史、秦正理、林壮一、牧野めぐみ、松岡かすみ、山内リカ/今西憲之、菅野朋子、岸本貞司、桐島瞬、柳川悠二)

週刊朝日 2016年1月1-8日号