杭偽装が発覚し、未曾有の危機に直面する旭化成グループ (c)朝日新聞社
杭偽装が発覚し、未曾有の危機に直面する旭化成グループ (c)朝日新聞社

 旭化成ブランドが危機に直面している。

 先月発覚した横浜市の大型マンションが傾斜した問題を発端とした、旭化成建材による杭工事の施工データ改ざん問題は、どこまで広がるかわからない「底なし沼」状態となってきた。

 そして、未曽有の危機に直面したトップの対応のまずさが、さらに事態を悪化させるという悪循環に陥っているのだ。

「御社の対応は、誠実とは言い難いのではないでしょうか」

 11月2日、約300人の報道陣が詰めかけた会見会場に、記者の怒声が響き渡った。

 旭化成建材が過去10年間に請け負った全国の杭工事3040件を調査するよう、国土交通省から指示を受けたのに対し、同省に提出した経過報告の会見だった。ところが提出した詳細は発表されず、記者の質問に対して親会社である旭化成の平居正仁副社長は「(データ改ざんのあった)杭の数は今わかりません。後で広報にお問い合わせください」。

 経済部記者がこうあきれ返る。

「経過報告の内容を把握せずに会見に臨むのは信じられない」

 そもそも10月30日に会見するはずが、国交省への報告の準備ができていないとして、当日の夕方になって2日に延期すると発表。さらに2日午後になっても時間と場所が確定せず、2時間前にようやく決まり報道各社へ連絡が行くというドタバタ具合だった。

 市場の見方は厳しい。会見の次営業日にあたる4日の旭化成の株価は15.5円安の711円となった。問題発覚後の先月15日に13%下落し、その後乱高下を繰り返し問題発覚前と比べて約2割安の水準が続いていた。

 旭化成の対応について、危機管理に詳しい中村克己弁護士は言う。

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