市原:でも、作家の方はご自分の書いたものが映像になると、満足することはないらしいですね。「違う!」って、目をそむけるらしいです。そういう話を何度も聞きました。

林:私は原作とは違うものだと思っているので、こんなふうに料理していただいてありがたい、これで本が売れるんだからいいじゃん、って(笑)。三島由紀夫みたいに、自分の小説の原作映画に主役で出たい人もいますから、いろいろですね。作家が通行人とかで自分の作品にチラッと出たりするのはよくありますが、それじゃ飽き足らなくなってくるんですよ。

市原:やっぱり主役ですか。

林:主役とは思いませんけど、セリフのある役をやりたいと思うんです。

市原:やってみてください。作家の方、たたずまいもいいし、言葉に重みがあるし、私たち、食いっぱぐれます。脅威ですよ。

林:でも実際やると、いかに無知な挑戦かがよくわかるんです。作家で通行人以上の役をやってうまかった人、聞いたことないですよ。

週刊朝日 2015年10月2日号より抜粋