いるか! そんな新入社員。と、ツッコめる幸せこそが、牧子ドラマの醍醐味。この前なんて、武井の掌に五寸釘を具現化してたからね。額に、もうすぐロウソクがゆらめくね。

 そんなファンタジーパートもありつつ、パワハラの被害者社員・杉本哲太のセリフなどは、マジ。

「会社は、自分の能力だけでは、陽の当たる場所には行けない。運が大きい。どうにもならない、運ばかりは。だから苛立つ。サンドバッグが欲しくなる。ハラスメントをやる」

 それは、パワハラのひとつの本質。大病をして、奇跡の生還をした彼の、「人は生きてるだけで、得してる」という悟りを開いたような言葉は、リアルに響く。

 しかし、哲太にしみじみしていると、後ろから袈裟がけで斬られるこのドラマ。真の恐怖をもたらすのは、女が女に放つセリフだ。

「若くて綺麗ってだけで、不愉快なのよ!」

 という若さへの呪詛はまだかすり傷。五臓六腑をえぐる致命傷とは……。

「本当にイタい女はね、自然体と無精をごっちゃにしてる中高年よ! 肌の手入れも体のシェイプもせず、毛穴開きまくりの二重あご、三段腹でナチュラルが好きな女!」

 今、私の額に五寸釘が。

週刊朝日  2015年8月14日号