俳優・益岡徹「企業に属して働く自分がイメージできず」 〈週刊朝日〉|AERA dot. (アエラドット)

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俳優・益岡徹「企業に属して働く自分がイメージできず」

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 学生にとっての“政治の季節”が終わりかけていた70年代後半。日本映画はかつての活気を失っていたが、アングラ芝居は盛んで、小劇場のムーブメントも生まれ始めていた。

「当時は、いろんなところで何かが終わって、次を模索している時期だったのかもしれないですね。僕は学生で、ATG映画や、状況劇場の舞台なんかを好んで観る一方で、サザンオールスターズの出現には度肝を抜かれたり(笑)。兄も、友人たちも普通に企業に就職していきましたけど、僕自身は、企業に属して働く自分がイメージできなかった。何にも守られない、縛られない“自由さ”みたいなものを、漠然と求めているようなところがありました」

 学生時代に、黒澤明監督の「影武者」のエキストラに応募。そこから、人づてで「影武者」で主演した仲代達矢さんが主宰する無名塾が新人を募集していることを知り、大学卒業後に入塾試験を受け、合格する。

「無名塾に入れば役者になれると思い込んでいたんですが、実際はそうじゃなかった(苦笑)。途中で辞めていく仲間も大勢いました。僕の場合はたまたま運良く仕事が続いて、そのまま今につながっている感じです」

 入塾から35年が過ぎた現在、スウェーデンの作家ストリンドベリの「死の舞踏」では、師匠である仲代さんと共演している。

「台本を読んだとき、正直『一体どうなってるんだこれは?』と思いました(苦笑)。それほど抽象的で、難解な作品です。でも僕は、わかりやすいものより、『どういうことなのか?』と思わせてくれる作品に、より魅力を感じる。ややこしい、抽象的なもののほうが稽古のしがいがあるんですよ。毎日『こうかな?』『ああかな?』なんてやっていくうちに、役者自身が変わっていって、それが一番刺激になるんです。この年になっても勘違いしたり、失敗したりする時間が持てるのは、すごく幸せなこと。もちろん、そういう作品は難しい。負荷がかかる。頭も痛い。肩が凝る。気も重い。でもだからこそ、無事終わったときに、『あー、面白かった』と思えるんです」

 壁にぶつかって、落ち込んだり凹んだりするのも役者の仕事。そんな仕事との接し方は、若い頃から変わっていない。では、年を重ねたことの利点は感じているのだろうか。

「年を取ると、すぐ言葉が出てこなくなることってよくあるじゃないですか。それは、頭の中の引き出しがいっぱいになっているからで、記憶力が衰えているのとは違うらしいんです。『どれだったかな』って探すのには時間がかかるけれど、経験を積んだ分、引き出しの数は増えているし、中身もいっぱい詰まっている。僕は、その説を積極的に信じています(笑)。役を演じるときも、この引き出しなのか、あの引き出しなのか探す作業を、若い時分よりたくさんできるってことだから」

週刊朝日  2015年2月27日号


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