俳優の宇梶剛士(たかし)さんは演じるだけでなく、劇団を主宰。脚本、演出も手掛けているという。作家・林真理子さんとの対談で語った。

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林:宇梶さんは、ご自分の劇団もお持ちなんですよね。脚本も演出もなさるんですか。

宇梶:そうです。もう25、26作書いてますかね。

林:演出するときは、怖い?

宇梶:昔は怖かったと思いますね。いまは怖くないと思いますよ。このあいだ、うちの番頭みたいなのが何回かつっかえてうまくいかなかったから、「やめる? やりたくない?」と言ったのがいちばん怒ったぐらいです。みんなシーンとしてましたけど(笑)。

林:ご自分ではやさしく言ったつもりでもね(笑)。宇梶さん、セリフ覚えるのは、早いんですか。

宇梶:遅いけど、覚えなきゃいけないから、「しょうがねえや」って覚えます。

林:その間にテレビのお仕事もあったりして。

宇梶:2時間ドラマが2本ぐらいあったりしますけど、それはいつものことなんで。

林:おうちで覚えるんですか。

宇梶:ほとんど家ですね。リポート用紙に写経みたいに写してます。書くとけっこう入るんですよ。書いたのに入らないときは、もう一回新しいページに一から全部書いていきます。

林:書いていると、「この役のこんな性格の人間が、こういうこと言うか?」と思ったりしないですか。宇梶さんはご自分でも台本を書く人ですし。

宇梶:そうですね、たとえば現代劇なのに「よもや、あいつは」って書いてあって、「よもや、っていつの時代よ?」と思ったりするじゃないですか。そしたら稽古のとき監督に、「ここ、よもやでいいんですか?」って聞くんです。監督が「ちょっと古いかな」「変えようかな」と言ったら、「監督がよろしければ」とか。だいたいそんなふうになりますよ。

林:ずいぶんマイルドな接し方なんですね。「おかしくね?」なんて言わないんですか(笑)。

宇梶:監督や演出家がやりたいことを、できる限り汲み取ろうというタイプの役者なんですよ。個人プレーしそうに見られてるようですけど(笑)。

林:宇梶さんはNHK大河ドラマにもお出になってますけど、大河のときは、ほかの民放のドラマとは心積もりが違ったりするんですか。

宇梶:大河はスケジュールの組み方も違うし、資料もどんどん送られてきますから、多少理解してから出たいというのはありますね。でも、「大河だから」とかで分けるのがいやなんですよ。差別が嫌いだから。

林:なるほど。

週刊朝日 2015年2月20日号より抜粋