1960年代、紅白歌合戦に7回連続出場など、一世を風靡(ふうび)した双子デュオ、こまどり姉妹。デビュー55周年にして、いま、再び注目を集める理由を作家の林真理子さんとの対談で明かした。
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林:お二人とも、あまり恋愛のお話はなさいませんけど、30代でご病気をされて機会がなかったという感じですか?
敏子:私は死んじゃう運命にあると思ってたから。「私が死んだらお姉ちゃん寂しいだろうから、つき合ってる人がいたら先に子供を産んで、生まれてきた子供を私だと思って育ててね」って言ってたわけですよ。
栄子:私と一緒になるような人がいるんだろうかと思ったら、妹の友達の友達がいたわけ。妹が死んだらその人と結婚しようと思って、入院から3年あとに産んだわけ。
敏子:女の子をね。そしたら私が奇跡的によみがえっちゃったのね。
栄子:それで結婚はしなかったの。妹が死ななかったから、「ゴメンね」って。妹が病気になったとき、私、自分のためたお金を全部使ってたし。
敏子:何億もね。
栄子:借金もしたし。それから普通のギャラの5分の1ぐらいでいいからと言って、ホテルのディナーショーを一人でやったの。「こまどり姉妹ですけど、妹はまだ病気で歌えないので、私一人で歌います。元気になったらまた二人で歌いますから」と言うと、お客さん喜んで聴いてくれるわけよ。それで私、声が出るようになったの。
林:そうしたご苦労を乗り越えたからこその、今回の再ブレークなんでしょうね。
敏子:35、36歳のとき、青山の占師の先生のところに行ったら、「あなた方は60歳過ぎまで歌いますよ」って言うの。「若いときのようなブレークにはならないけど、それに近いことが起きますよ」って。
林:ほおー。
敏子:信じられますか、何十年も先のことを。国税庁から1億近い追徴課税が来て、やっと返し終わると、また別のことが出てきたり、着物やギャラを盗まれたり。ずっとお金に追われてやってきたわけですよ。それが一生続くのかなと思ってたから。
林:今が一番いいときですか?
敏子:楽しいというか、ラクですね。若いときはステージで足が震えるほど緊張したけど、今は若い歌手から、「足に根が生えてるようだ」と言われるのよ(笑)。
林:私も若い人たちに、こまどり姉妹を見てもらいたいと思いますよ。
栄子:でも、私たちトシだから、明日死ぬかもしれないし。
敏子:いつお迎えが来てもいいように覚悟はしてるの。
林:何をおっしゃる。いま占ってもらったら、「90歳過ぎても二人で歌ってますよ」と言われるんじゃないですか(笑)。今度またコンサートにうかがいます。若い友達をいっぱい連れて。
敏子:ありがとねえ。
栄子:ほんとうれしいわァー。
(構成 本誌・野村美絵)
※週刊朝日 2014年10月24日号より抜粋