「舞台となる山口県萩市に下見に行ったとき、私と気づかないタクシーの運転手さんが『次の大河は萩でね、井上真央ちゃんが主演なんだよ』と教えてくれて(笑)。楽しみにしてくれる人がいて、地域密着というのは大河ならではかな……」

 2015年NHK大河ドラマ「花燃ゆ」のスタジオ取材会が9月11日に行われ、主人公の文(ふみ)を演じる井上真央がこう語った。

 同作は、幕末の長州藩士・吉田松陰の妹・文が、激動の運命に翻弄されながらも、新しい時代へと兄の志を引き継いでいく生涯を描いた歴史ドラマだ。文は、吉田松陰の兄の末裔の杉治彦氏が「家系図に名前があったなぁという程度の認識で、大河になると聞き驚いた」と言うほど、歴史的には知られていない人物だ。

 文は松下村塾を“女幹事”として切り盛りし、塾生の一人だった久坂玄瑞と結婚。だが、久坂が24歳のときの1864年、禁門の変で自決し、未亡人になった。その後、長州藩最後の藩主、毛利元徳の子・元昭の子守役に抜擢され、41歳のとき、亡き姉の夫であった群馬県令・楫取素彦(かとりもとひこ・小田村伊之助)に嫁ぎ、華族の妻となった。

 無名な女性が主人公という点は新島八重を主人公にした「八重の桜」が共通している。平均視聴率14.6%で大河史上ワースト4位に終わった「八重」同様、苦戦するかと思いきや、NHK関係者は本作を、「安倍晋三首相ありきの大河」と明かし、こう言う。

「安倍首相は松陰を尊敬し、昨夏『お国入り』した際には松下村塾を訪れ、松陰像の前で記者会見を開いたほど。本作で首相のご機嫌も取れ、首相もPRしてくれる。一石二鳥なのです」

 強い助っ人がいるようだ。コラムニストのペリー荻野氏は、こう分析する。

「男性を支え共に生きた文は、知られていない人物だからこそ描き方が未知数。新たな角度から、楽しんで歴史を見られるはずです」

 そして注目は、イケメン軍団「F4」に囲まれた学園生活を描いた、井上主演の大ヒットドラマ「花より男子」の幕末版が繰り広げられることだという。

「松陰は伊勢谷友介が演じ、文の夫・久坂玄瑞役に東出昌大、後の夫になる小田村伊之助に大沢たかおが名を連ね、高杉晋作役には高良健吾が起用されています。その他、要潤や瀬戸康史ら華のある各世代のイケメンが出演するので、女性視聴者が食いつくのは間違いない」(荻野氏)

 首相のPRとイケメン効果で、大ヒットなるか。

(本誌・上田耕司、小泉耕平、福田雄一、牧野めぐみ、山内リカ/今西憲之、黒田朔、三杉武、横田一)

週刊朝日 2014年9月26日号