日本医科大学武蔵小杉病院腫瘍内科医の勝俣範之氏は、現在の抗がん剤治療は進化しており転移を抑え込んで共存できると語る。

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 近ごろは副作用が少ない抗がん剤が作られ、「抗がん剤=吐く」というイメージが変わりました。制吐剤も進歩した。外来で治療できるので、仕事しながら、また遠方からも通えます。

 私が担当する福島県在住の吉田イクヨさん(67)は、卵巣がんにより腹膜播種と肝転移の状態から、抗がん剤で転移巣を抑え込んだ「共存」状態を10年近く続けています。自然豊かな土地でカラオケしたり笑ったりする日常の相乗効果もあるかもしれません。

 ただ、これはあくまでも一つのケース。同じがんでも薬の組み合わせは人それぞれで、医療者は知識をもっと持たなければなりません。「70歳を過ぎたら抗がん剤はNO!」と言う医師がいますが、実年齢と生理学的年齢は違う。内臓がしっかりと機能し、合併症が少なければ高齢でも抗がん剤は可能です。私の患者さんの最高齢は86歳で、外来で治療を続けています。

 海外では、がん専門医といえば外科医ではなく「オンコロジスト」(腫瘍内科医)を指します。日本には抗がん剤の知識を持つ医師が少ないのです。がん告知された時の病院選びはブランドではなく、腫瘍内科の有無が目安になるかと思います。

週刊朝日  2014年6月20日号