各界著名人の出身大学を目にすることは多い。子を持つ親としては、そこに至るまでの高校も大いに気になるところ。「どの高校がいいのか?」。編集部が調べた業界別名門高校の傾向とは――。

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 作家ランキングを見ていただこう。近年の芥川、直木(ともに過去30回)、三島、山本(ともに過去25回)の各賞、そして本屋大賞(全11回)を受賞した作家の卒業高校をまとめた。

 国公立の高校が目立つ。小説新潮の元編集長で、京都造形芸術大学の文芸表現学科長を務める校條剛(めんじょうつよし)氏が言う。

「偶然の要素も否定できませんが、作家の経歴が多様化していることがわかります。開国以来、漱石や芥川など東大卒業者が文学を担ってきましたが、そうした時代は完全に過去のものとなったのでしょう」

 気がかりなのは東京(22人)を筆頭に大都市圏(大阪、福岡ともに6人)の高校が目立つことだという。

「ネットの時代の今も文化格差が生じているのではないかと心配です。書店や図書館の数が作家の誕生に影響を与えているとなると、文学だけでなく教育の問題になってきます」

 スポーツではプロ野球とJリーグの出身高校が対照的な結果となった。まず野球ライター京都純典(みやこすみのり)氏は、「順当な結果です」と言う。

「横浜(14人)、大阪桐蔭(13人)とも名門ですが、注目したいのは両校とも卒業生が即戦力だということです。その育成力には改めて驚かされます」

 基本的には甲子園常連校が並ぶ野球に対し、サッカーは吉田(広島、27人)や第一学院(茨城、16人)といった「高校サッカー無名校」がランクインしている。サッカージャーナリストの六川亨(ろくかわとおる)氏が言う。

「吉田や第一学院はユースの選手が多く通う高校だからです。16歳でプロ契約を結んだ柿谷曜一朗が第一学院を卒業したのが代表例です。W杯の日本代表に選ばれた選手が上位の高校にあまり見当たらないのも、ユースをへてプロ入りする選手が多いからです」

 最後はノーベル賞と国民栄誉賞受賞者の出身校だ。正真正銘の「天才」たちが名を連ねるが、前者は国公立の高校が圧倒的に多く、後者は高校に進学していない人もいる。

「国公立は生徒の面倒見が悪いところも少なくありませんが、私立は逆に『型にはめる』きらいもある。高校教育においては『放任』も大事だということを、ノーベル賞受賞者のリストは語っていると思います」(宗教学者の島田裕巳氏)

 こうなると親にとっては「結局、子供をどんな高校に進ませればいいんだ」という思いが生じるかもしれない。教育情報会社「大学通信」の安田賢治常務は「親は子供に実力以上の学校を目指させるべきだ」とアドバイスする。

「公立の中高一貫校も定着してきましたし、東京なら都立高も“再生”の端緒が見えてきました。選択肢が増えてきたからこそ、安易な妥協はさせるべきではないと思います」

 中学や高校受験で妥協すると癖になってしまうという。確かにリストに載る著名人の多くは、妥協しない生き方をしてきたに違いない。

週刊朝日  2014年5月30日号より抜粋