蜷川幸雄、野田秀樹などが演出する舞台で活躍する俳優・堤真一。そのキャリアに緊張など無関係かと思いきや、実際はそうではないという。

 やっぱり舞台の人なのだろう。スチール撮影は苦手と言いながら、その立ち姿や通る声は、舞台での存在感が容易に想像できる。

 20代の頃は、初日前に「まだ一日しか稽古してないのに本番が始まる夢」を必ず見た。30代後半には、「開き直って台本を持って舞台に出ようとするが、台本が見当たらない夢」。最近は、「とりあえず1幕はやれたが、『2幕はどうしよう』という夢」にうなされる。それでも、年に数本は原点の舞台に戻る。公演中の「ロンサム・ウェスト」では、激しい喧嘩にあけ暮れる兄弟を瑛太と演じている。

 映像作品での、「初めまして」の後に恋人や家族を演じる感覚が、若い頃はとにかく難しかった。「逆に今はそれっぽく見せられているような気がしている自分が嫌ですね。舞台はその場で自分自身をさらすので、ごまかしがきかない。だからこそ継続してやっていかないとだめだなって思う」

 ちなみに、写真が苦手なのは、「中学高校の卒業アルバム、全部俺は白目むいてたからかな」

 関西のアクセントで、真顔で答えるのだった。

週刊朝日  2014年5月23日号