現在発売されている週刊朝日MOOK「漢方2014」では、14の病気の漢方処方例が掲載されている。その中から、「名医」が教えてくれた「尿漏れ」に悩む女性への漢方処方を紹介する。

 尿漏れは、大きく分けると腹圧性尿失禁と過活動膀胱(ぼうこう)の二つの病気がある。腹圧性尿失禁は、骨盤底筋が緩み、くしゃみやせき、重いものを持ち上げるなどしたときおなかに力を入れると、尿が漏れてしまう症状だ。出産や肥満、加齢などが原因で、40歳以上の女性の2~3人に1人が発症している。過活動膀胱は、原因不明だが、急な尿意が頻繁に続くようになる。トイレに間に合わないと尿漏れし、切迫性尿失禁と呼ばれる。加齢とともに増えていき、年齢が高くなるほど量も多くなる。

「尿漏れは、問診、尿検査、画像検査などで診断します。腹圧性尿失禁は問診でほぼ判断がつく場合もあります。画像検査や尿検査で何の原因も見つからないのに症状がある場合が過活動膀胱です。治療方針は、回数、量、どの程度困っているかの3点により決めます。回数は週に1度から1日数回までさまざま。量が少量では下着を替えるほどの漏れはありませんが、多量になると、スカートやズボンまでぬらす状態になります」

 と話すのは、女性医療クリニック・LUNAグループ(神奈川)理事長の関口由紀医師だ。

「治療はまず骨盤底筋トレーニングをおこなってもらいます。肛門(こうもん)と膣(ちつ)を締めたり緩めたりする訓練で、腹圧性尿失禁の場合7~8割の患者さんは日常生活で支障のない程度まで改善します。1カ月に1度の指導で、3~4カ月続けてもらいます。トレーニングの補助として内服薬や電気・磁気による刺激療法などを並行し、症状を改善させていきます」(関口医師)

 重症の人には日帰り手術も勧めている。

「漢方ではまず補中益気湯(ほちゅうえっきとう)を処方します。尿漏れの方は、抑うつ状態で元気のない、気虚の人が多いためです。太った方には防風通聖散(ぼうふうつうしょうさん)を処方。尿道内圧を高めるために葛根湯(かっこんとう)や麻黄附子細辛湯(まおうぶしさいしんとう)も適宜併用します。過活動膀胱では、排尿記録をつけてもらい、いつ尿意を感じるかを自覚してもらいます。そして尿をためる努力をする膀胱訓練と骨盤底筋トレーニングと内服薬の併用治療をします」(同)

 内服薬には、膀胱の異常収縮を抑える抗コリン剤などを処方し、病態に合わせて冷えや老化予防の漢方を併用する。それでも効果がない場合は、刺激療法、一部の施設ではボトックス注射をおこなっている。

「大事なのは自分で症状を管理し、水分の摂りすぎや冷えに注意し、風邪予防を心がけることです。ストレスをためずに、症状にも神経質にならないで、もし症状が出たら、専門医に相談してください」(同)

週刊朝日  2014年4月11日号