いくら薬が効いていても、副作用が強ければ治療を続けるのはむずかしい。そのため、抗がん剤治療を実施する医療機関では、この副作用対策をとくに重視している。実際、抗がん剤と並んで、副作用対策も進んできた。

 抗がん剤治療を受けた患者の多くがもっとも苦痛と訴える副作用の一つが、「吐き気や嘔吐(おうと)」だ。吐き気や嘔吐をもたらす「嘔吐中枢」という場所に抗がん剤が作用したり、胃や腸の粘膜を刺激したりすることで病状が起こる。患者にとって苦しいだけでなく、食べものを受け入れられなくなるので、体力低下や栄養不足に陥ったり、QOL(生活の質)が低下したりする。

 それが、いまは吐き気や嘔吐が出やすいことがわかっている抗がん剤を投与する場合は、事前にいくつかの制吐剤(吐き気止め)を用いて、病状が出るのを防ぐのが一般的だ。

 ほかにも、一部の薬では、事前に副作用が出やすいかどうかを調べることも可能になった。脱毛などいまだ避けられない副作用があったり、分子標的薬では皮膚障害や間質性肺炎などの副作用が出たりして、まだ完全に副作用を克服できていないが、「以前に比べてかなり改善している」と和歌山県立医科大学病院(和歌山市)腫瘍センター副センター長の上田弘樹医師は話す。

「いまは患者さんへの薬の説明に多くの時間を割くようになり、患者さん自身も以前と比べて積極的にセルフケアをするようになった。抗がん剤の減量や休薬をせずに治療を続けられるケースが増えてきました」(上田医師)

週刊朝日  2014年4月4日号