不覚にも泣ける? 男性から圧倒的支持の小説 〈週刊朝日〉|AERA dot. (アエラドット)

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不覚にも泣ける? 男性から圧倒的支持の小説

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週刊朝日

 恋愛小説に感動するのは女性、というイメージを抱きがちだが、今、男性から圧倒的な支持を得ている小説がある。

 10年ぶりに再会した幼なじみが、魅力的な女性に大変身。しかも主人公に一途な思いを寄せ続けており、二人の距離は急速に縮まっていく。ところが、彼女は大きな秘密を抱えていて……、累計発行部数50万部を超える越谷オサムの小説『陽だまりの彼女』だ。今年10月には映画の公開も控える。「文庫化した直後、読者の約6割は男性」(新潮社)で、編集部には特に中年男性から熱い感想の声が届いた。

「若者向けの小説かと思いきや、不覚にも泣けてしまった。妻と出会った二十数年前のころが懐かしく頭に浮かびました」(48歳男性)
「初々しいというか、自分にもあったな、こんなウブな恋。あのころ、僕も若かった……」(57歳男性)

 担当編集者の宮川直美さん(30)は、男性作家による男性一人称の語りで、男性の純真さが色濃く出ているこの小説は、男性がきっと共感してくれるという手応えを感じていた。「男性にとっては理想の恋愛の形やノスタルジー、かたや女性にとっては一人の男性にとことん愛されるというファンタジーというように、男女それぞれに違った楽しみ方ができる物語です」(宮川さん)。

 ほのかに好意を寄せていた女の子が10年後にかわいくなって、しかも自分のことが好きだっただなんて、「どれだけファンタジーなんだ!」とツッコミたいのはおいといて、“おっさんの乙女心”を感じずにはいられない。

「男のほうが間違いなく女々しい。“女々”じゃなくて、“男々”でしょう!」。そう断言するのは小説『ルック・バック・イン・アンガー』などで男の生と性を描く作家の樋口毅宏さん(41)だ。放送作家の松崎まことさん(48)と一緒になって、映画「サニー」を絶賛した一人だ。書き手として、“泣ける話”についてどう思うのだろうか?

「人を泣かせるのは簡単。動物、子ども、貧乏、死の“泣きの四天王”を出せばいいだけのことです。感動とは、強制的なものだったりもするのですが、作者にとっては、読み手に感情操作と思わせずに、構成を組み立てられるかが鍵。ただ、本当の感動って、泣いて『あぁ気持ちよかった』で終わるようなものではなく、それこそ打ちのめされるものではないでしょうか」(樋口さん)

 人の心にぐっと突き刺さる、泣きのツボは無数にある。普段、自分の感情を上手に出せない人や、泣いた後の爽快感をスポーツ感覚で得たい人は、「涙活」イベントに参加してみるのも一つの方法だろう。

 インドア派は映画や小説に自分の人生経験を重ね、わき上がる感情とともに流す涙も心地よさそうだ。時には、物語のカに庄倒されるような、強烈な感動に浸るのもいい。

「男は黙って……」よりも、乙女心を垣間見せたり、自分の感情をストレートに出せる男性は生き生きとして見える。そんな姿はどこか愛らしくもある。

週刊朝日 2013年5月31日号


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